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古代湖の底から

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哀歌の船に同船する女子会メンバーたち、その威風堂々さに圧倒されたのか、狭い船上を、あららららと押し合いへし合いしながら、ほぼ三歩ずつ後退りをする。
それをかき分け、哀歌の前へと進み出たボーヤ、「さっ、円盤機に乗り移るぞ」と手を引っ張った。
 すると哀歌は素早く手を払い、「ちょっと待ってね」と前で手を合わせる。
「おいおいおい、なんでこの場に及んで……。ハネムーンの覚悟は決めてたんだろ」
 ボーヤは表情を曇らせた。だが哀歌はそれを聞き流し、突として大声を発する。
「お母さんにナポレオン、一緒に宇宙旅行に行くんえ。出て来て……、チョンマゲ!」
 この呼び声が船底に届くか届かぬ間に、伊調神恋慕が愛犬を連れて現れ出て来たのだ。
 ボーヤはこの予想だにしなかった展開に腰が抜けるほど驚いた。結果、フニャフニャと甲板に崩れ落ち、あとは弱々しく叫ぶしかなかった。
「アリエナーイ!」

 そうなのだ。ヨロシオマッ星では母親が娘の人生に噛み込んでくることはまずない。それなのに、ババ付き、ワンコロ付きの新婚旅行になるなんて、信じられな〜い。
それでもボーヤは力を振り絞って、ヨロヨロと立ち上がり、意を決して質問する。
「お母さん、家でミステリー小説を書いてんじゃなかったのですか?」
 しかし、母は強行だった。
「あら、宇宙はミステリーの宝の山よ。取材旅行というか、物語のトレジャー・ハンティングに行くのよ」
こんな屁理屈で押してくる。

 しかし、これに刃向かって、四の五のと言ってる場合じゃない。とにかく時間がないのだ。
 そこでやっぱりボーヤはお馴染みの言葉を言い放つ。
「ヨロシオマッ星!」
こんな一悶着があったが、帰結として、1エイリアンと人類メス2匹、並びにドッグ1匹が仲良く小型潜水艇へと、思い切り詰め合って乗り込んだ。

 エンジン始動から発進、あとはヨーソローと水面に浮上する円盤機に向かう。そして前方30メートルまで接近した時、ボーヤが潜水開始とハンドルを操作した。
 グググッと水の抵抗を受けながら、小型船は円盤の下へと潜り込む。そして底部にパカッと開かれたハッチからフライング・ソーサーに無事ボーディングする。


作品名:古代湖の底から 作家名:鮎風 遊