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古代湖の底から

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哀歌がちょっと変と小首を傾げた時、各ヘリコプターから「ラジャー」、「了解」、「御意」など様々な返答がある。
 だけれども、御意とは? ボーヤにとってはこっちの方が、ちょっと変。
伊調神哀歌という女は民から崇拝される女王さま? それとも魔女か?
 この円盤引き上げプロジェクトに参加した連中から崇められてることは確かだ。なにか宇宙的なパワーを持ってそうだと感じ取る。
 そんな畏怖の念をボーヤがあらためて抱いた時、頭上ではゴーゴーとヘリコプター音が増す。その凄まじい響きは止まることもなく湖面を打ち、白波まで立っているではないか。
 この意味は、水中に沈めた網を引き上げ始めたということだ。

 それから10分が経過し、空へと伸びたロープがピンと張った。そしてすべての動きが一旦止まった。まるで凍り付いた世界に迷い込んだようだ。
 こんな塩梅(あんばい)がなぜ発生したのか、ボーヤも哀歌も理解している。
 湖底の地下水道に栓をした状態になっている円盤機、水道への吸引力、プラス水深100メートルの水圧を受け、要は抜けないのだ。
「エンジン全開!」
 哀歌が無線の向こう側へ大きく叫んだ。
「御意」、「御意」、「御意」……、今度は見事に統一された10個の御意が返ってきた。それから瞬時を置かず、天が波打つほどの轟音が、ゴ〜ゴ〜ゴ〜〜〜。
 それがマックスになった瞬間、今にも切断されそうなほどにロープがピンと張り切った。
「あ、あ、あ、あ、ちょっとヤッベエぞ!」
 ボーヤが気が気で思わず唸ると、哀歌からは「お綱(つな)はん、お気張りやす!」と檄が飛ぶ。

 ホント不思議なことだ。哀歌のこの思いが伝わったのか、10機のヘリコプターがガクガクと上下に大きく揺れた。そしてその後、上方へとゆっくり昇り始めたのだ。
 すなわちこの状況は、栓がポコッと外れたことに――間違いない!
それと同時に、網が掛けられた時空貫通円盤機が浮上し始める。その証拠に、徐々に湖面がブワーッと盛り上がってくる。
 そして五分後には網が掛けられた直径30メートル以上の円盤が、ポッカリと湖上にその勇姿を現した。
 メタリックに輝くオパール色。眺める角度により赤やブルー、そしてグリーンに色変わりする。誰一人として見たことがない彩色だ。
 2000年の時を経ていても、まったく錆や退色が見られない。実に美しい!
 とはいえども、どこか奇妙な色だ。こういうのを宇宙色というのだろうか。
そして、デカイ!


作品名:古代湖の底から 作家名:鮎風 遊