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古代湖の底から

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しかし、これら一連のボーヤのパフォーマンスに対し、哀歌がすげなく吐き捨てる。
「すべて古典的で――、ダッサッ!」
 これはちょっとまずいことに。もしこのプロポーズに失敗すれば、ボーヤは母星に帰還できず、二度と出てこれない宇宙蟻地獄、近場のブラックホールに投げ捨てられる。
ボーヤは哀歌の真正面にあらためて立った。ここは一世一代の大プロポーズ、哀歌の瞳を精一杯の純な眼差しで見つめて。
「哀歌さん、僕にとって君はこの宇宙で最も美しいスターです。だから僕と……、結婚してください」
力強く言い切ったボーヤ、頭(こうべ)を垂れて手を前へと差し出した。

 おいおいこんなシーン、某テレビ局の嫁さん発掘番組で観たことあるぞ。それもそのはず、最近ボーヤは日本のTVに嵌まってる。
 そんなことは知っての上の哀歌、「あっらー、これでお母さんとの三角関係にケリがつけられそうだわね」とニコリと笑う。
 その後、目をウルウルさせながら、「私を気に入ってくれはったんやね」と差し出されたボーヤの手に握手する。それからだ、哀歌は嫁入りの誓いとして叫ぶのだった。
「ヨロシオマッ星!」

 ボーヤから哀歌へのプロポーズ、これで二人は目出度く結ばれることに。
 そして2週間が経過した頃だった。
 琵琶湖の上空には紺碧の空が広がっている。まことに爽やかな秋の一日だ。
 しかし、その蒼さを轟音とともに牛耳ろうとする10機のヘリコプターが、これでもかこれでもかと執拗に旋回している。
 テリトリーとおぼしき水上には、漁船にモーターボート、ならびに小型クルーズ船など20隻の舟によって径100メートルの円陣が組まれてる。

 これは一体どういう事態なのだろうか。
 位置は奥琵琶湖の竹生島(ちくぶしま)の南西約10キロメートル。この辺りの水深は100メートルあり一番深い。
 婚約後、哀歌は一度潜水艇に乗せてもらい、湖底へと潜り、その底にヨロシオマッ星人の円盤機が存在していることをすでに確認している。
 さあ、準備は整った。
「網掛け開始!」
 琵琶湖トレジャー・ハンティングの総指揮官・哀歌が号令を発した。
これと同時に20隻の船が、地球上では最も強度があるとされるナノチューブで編まれたネットを、直径100メートルの円にして湖面に広げる。
 そしてそのセンターから、径5センチメートルと太い、もちろんナノチューブ製のロープだが、1本空へと立ち上がってる。その上空50メートルの位置で、ロープは10本に枝分かれし、それぞれの先端を10機のヘリコプターがしっかりと掴んでいるのだ。


作品名:古代湖の底から 作家名:鮎風 遊