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古代湖の底から

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 こんな交信を経て、ボーヤは積極的に、哀歌が立ち上げた琵琶湖トレジャー・ハンティング・プロジェクトに参加していくことを決心した。
 こうなれば、善は急げだ。
 早速その翌日に、ボーヤは哀歌に新タスクを具申する。
「哀歌さんがリーダーで仕切る宝探しですが、単に琵琶湖の底から鉄隕石を拾い集め、日本刀を作るというような企画も面白いかも知れませんが……。しかし、湖底には我々の空飛ぶ円盤が眠っています。その宇宙最先端の技術が凝縮されたフライング・ソーサーを、引き上げてみませんか」

唐突に、こんなオファーを受けた哀歌、「あっ」と一言漏らしたが、あとはただただ沈黙を続ける。だが明らかに瞳に輝きが増してきているようだ。
 ボーヤは哀歌の正面に立ち、ぎゅっと両手を握る。
「この円盤には私と同じ三人のヨロシオマッ星人が、今も乗務しています。そこで、お譲りすることは出来ませんが、いくつかの高付加価値の物品や情報をお渡しできます。それに、もし引き上げに成功した暁には、哀歌さんを白鳥座への宇宙の旅、いえ、ハネムーンをプレゼントさせてもらいたいと、キャプテンが申しております」
 それはまことに強引な誘導だった。それにしても極楽トンボのようなボーヤが意外だ。案外しっかりしているかもよと考えた哀歌だが、それ以上に、もともと何にでも首を突っ込みたくなる性分であることから。
「へっ、そうなん。もしお宝が手に入れば、一気にお金持ちになれるんやね。それにハネムーンって……、わちき、頑張るえ」
 やっぱりひょいと話しに乗っかってきた。しかし、ここで哀歌は人差し指を頬にあてる。そしてハタと。
「新婚旅行って、ところで……、誰と?」
 こう疑問を投げつけられたボーヤ、こいつ案外鈍いなと感じたが、「へへへ」とちょっと照れる。それから哀歌をじっと見詰め……。
「もちろん僕ちゃんでありまして、我々の縁は似合い似合いの釜の蓋、私は白鳥座生まれでありますが、比翼(ひよく)の鳥になりとうあります」
 こう言ってボーヤは哀歌の手を強く握る。

「えっ、坊や、これって、プロポーズ?」
 目を白黒させる哀歌、それでも頬をポッと薄紅色に。
 この微かな色変化に、メッチャ可愛いオナゴはんと感じ取ったボーヤ、あとはメロメロに。
 それでも踏ん張って、少し太めの親指を前へと突きだし、――「ピンポーン」。


作品名:古代湖の底から 作家名:鮎風 遊