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古代湖の底から

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優秀な部下のボーヤへ
 ミッション遂行、ご苦労さん。
 近々に地球人による琵琶湖の湖底探索が開始されると心得た。
 これは我々にとって、大きく前進だ。
 なぜなら、我々がやりたいことは100メートルの湖底から浮上し、白鳥座のヨロシオマッ星へと帰還することだ。

 しかし、ここで問題が。
 我々が乗る円盤は宇宙最先端の時空貫通機だが、知っての通り一つ弱点がある。
 要はH2O内、すなわち水に浸った状態では時空の扉を開くことができない。
 この負の性能を2000年前も充分認識をしていたが、イッチョカミ星人に猛追さる状況下で、我々は身の安全を確保するため湖の底に潜ることを選択した。
 さらに湖底の地下水道の入り口に円盤機で栓をし、水位を上げる対策も取った。
 結果、2000年の時間を快適に眠り、ウェークアップ・コールがなくても正確に目覚めることができた。

 しかし、課題はここから先だ。
 我がフライング・ソーサーを宇宙へと飛ばすためには、まず水中から抜け出さなければならない。
 すなわち水面上へと浮き上がらなければならないのだ。
 このためには大きな外力をもって、風呂の栓を抜くように円盤機を引き抜く必要がある。
 ここは千載一遇のチャンスだと思わないか?

 いいか、ボーヤ、お前のお気に入りの哀歌に、機体のサルベージを依頼せよ。
 もちろん成功すれば、お礼をしたい。
 無事浮上した暁には、彼女をヨロシオマッ星に招待することにする。
 そしてボーヤは哀歌と愛を育み、結婚すること。
 アンチーヤンもアーネゴも、そして私もおおいに祝福しよう。
 そしてお前たちにはやがて子供が出来、それから孫もと。
言い換えれば、これはヨロシオマッ星人のDNAを人間に植え付ける初めての試みだ。
これが成功すれば、我々は人類と姻戚関係を結ぶこととなる。
 そしてその先には、子孫たちが地球へと行き、我々の文明をもって発展に貢献し、やがてこの青星を支配する。
 つまるところ地球を我がものとする、これこそが『地球、いただいちゃいます作戦』なのだ。

 いいか、ボーヤ、あらためて指示するが、
 哀歌をそそのかし、円盤機の引き上げを――、成功させろ!
                       キャプテンより


作品名:古代湖の底から 作家名:鮎風 遊