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古代湖の底から

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 しかしボーヤは納得できない。
「えっ、なんでやねん、俺があんたらの、船頭にならなあかんねん!」
 京都に滞在してすでに3ヶ月、ボーヤはもうしっかりと訛ってる。それでも精一杯文句を付けた。
 これに哀歌はいかにも雅(みやび)に微笑み返し、ボーヤの耳元で囁いた。
「わて、あんさんにはちゃんとしたお務めで、きばってほしいんどすエ」と。
 たとえエイリアンであっても、この語尾の『エ』が、うーん、たまりまへんがな。
 これでボーヤは『エ』付きフェチへと一丁出来上がり。
 要は哀歌への恋心がマックスに、ちゅうか――、イ・チ・コ・ロ――でんがな。
 結果、トレジャー・ハンターたち全員を前にして、デレデレと宣言してしまうのだった。
「宝探しの船頭さん、ヨロシオマッ星!」

 それにつけてもこういう話しの展開を、トントン拍子と言うのだろうか。琵琶湖湖底のトレジャー・ハンティング・プロジェクト、これが女子会満場一致で決議されたのだ。
 そしてその夜、ボーヤはこの件についてキャプテンにメールで報告する。


キャプテンへ
 迂闊(うかつ)でした。
 世話になってる女流作家の娘、哀歌の口車にホイホイと乗せられてしまったのです。
 と言うのも、今まで誰の手も入っていない古代湖、琵琶湖の湖底を、私が運転する潜水艇で探索することになってしまいまして……。
 目的は、宇宙からの落下物、たとえば地球には存在しない鉱物や素材の収集です。
 さらにあわよくば宇宙生命の痕跡が残る物体、いや、新生物の発見をしたいと意気込んでいます。
 つまりこれにより一山当てようという算段でして、まあ、一言で言えば宝探しですね。

 ただ私が危惧してることは、琵琶湖の底で、2000年間沈黙し続けてきた私たちの時空貫通円盤機です。
 私が伊調神恋慕に琵琶湖湖畔で拾われた時に、私の仲間が湖底にいますとゲロしてしまいました。
 その時、恋慕はミステリー小説のネタにするわと軽く言ってました。
 それから話しは恋慕と哀歌に弄(もてあそ)ばれ、現在湖底の空飛ぶ円盤は『ここだけの話しよ』状態にあります。
 だけども、私がちょっと好きな娘の哀歌は、なかなかのイッチョカミでして……。
 いずれ、私たちのフライング・ソーサーも、言ってみれば宇宙からの落下物ですから、発掘したいと言い出すでしょうね。
 その時は、どう対応致しましょうか?
                  ボーヤより


作品名:古代湖の底から 作家名:鮎風 遊