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古代湖の底から

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 その様子を見ていたボーヤ、その変化になにか不吉な予感を覚える。そんなボーヤを哀歌は完璧に無視し、背筋を伸ばして自信満々に締め括る。
「そうです、琵琶湖、つまり古代湖の底には宝が一杯眠っているのです。たとえば宇宙からの飛来物、そう、隕石です。100年に1個落ちたとしても、今の位置で40万年、たとえ琵琶湖が幾つかに分裂していたとしても、4000個は落下しています。その中に、世界の名刀、流星刀の原料となる鉄隕石もあることでしょう。また宇宙の起源となる鉱物や宇宙生物を閉じ込めた隕石もあるはずです。さらに、ここにいる坊やが舞い降りてきたように、宇宙からの未確認飛行物体が水没し、そのまま存在している可能性も……、ありんす」

 ここまで一気に語った哀歌、大きく一息吐いて、この女子会の結論を述べる。
「そやさかい、わちきたちの新プロジェクトは――、古代湖の底のトレジャー・ハンティングでありんす」
 パチパチパチ……、拍手の嵐が巻き起こる。

しかし、この熱い盛り上がりを目にしたボーヤ、「琵琶湖の底の石っころを拾い集めてどうすんだよ」と、まったく理解できない。
 そんな時に一人の女子がゆるりと立ち上がり、申し訳なさそうにポツリポツリと述べる。
「哀歌リーダー、私もこのプロジェクト、素晴らしいと思うわ。だけど資金もいるし……、またどうやって、深い水底にある物を探して、持ち帰ってくるの?」
 言われてみれば、その通りだ。このプロジェクトは絵に描いた餅、無理だわ、と瞬時に熱狂は冷め、メンバーたちは一斉に項垂れる。そしてボーヤは、ざまあ見ろ、とニンマリと笑う。
 それにしても、文明が充分発達していない人間たちって、こんなくだらない宝探しプロジェクトに一喜一憂できるんだから結構幸せだなあ、と羨ましくもなる。

 だが一方、哀歌にはまったくの動揺が見られない。ボーヤがなぜ? と手を頭にやると、淀みない透き通った声で。
「心配はないわ。まずお金の方だけど、隕石に新素材や有機物を発見することを前提に、京都の最先端科学企業がスポンサーになってくれたわ。そして驚かないで、私たちには高性能な潜水艇があるの。これここだけの話しで、秘密よ」
 確かに、それはそうだけど……、ボーヤは哀歌の自信の理由を理解した。されども、ここだけの話しは決して秘密にならないことは宇宙の常識。
 その上に、我がヨロシオマッ星人の秘密兵器を、勝手に女子会プロジェクトの道具にするなよ、と叫ぼうとした時、哀歌が言い切るのだ。
「その潜水艇の運転手さんこそ、ここにいる――坊やさんです!」
この紹介と同時に、全員からそれはそれは熱い視線がボーヤに注がれた。


作品名:古代湖の底から 作家名:鮎風 遊