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古代湖の底から

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 しかし、訪ねてみるとその寄り合いは実に奇想天外なものだった。
 すなわちこの女子会は女性のトレジャー・ハンターたちの集まりだったのだ。言い換えれば、日本のあちらこちらに隠された財宝を見つけ出す、山っ気一杯のメスたちの集団だったのだ。
 そして驚くことなかれ、なんとリーダーは、最近ボーヤが胸焦がす伊調神哀歌なのだ。小耳に挟んだ情報によれば、徳川埋蔵金などの発掘に長年携わってきたとか。

「うーん、俺が恋する女は……、一発屋だったのか」
 実直と気の良さを美徳とするヨロシオマッ星人のボーヤは、今まで味わったことのない変ちくりんな気分となった。
 そんな中、会はまことに華やかに進行し、やがてお嬢さまたちのお喋り一杯の賑やかな食事も終わった。
 次の式次第は各自からの活動報告だ。それぞれの女子から、財宝の穴に落ちたとか、重いお宝を持ち上げて腰痛になったとか、眉唾もので滑稽な宝探し奮闘記が語られた。

 そして宴もたけなわ、いや女子会も佳境となり、このプログラムの締め括りとしてリーダーの哀歌が立ち上がった。そして、いきなり……。
「本日はヨロシオマッ星人の――、坊やさんに特別参加願ってます。坊やさんとは縁あって、というか、白鳥座のスワンでありながらツバメにと、母が琵琶湖湖畔から拾ってきました。ところがツバメどころか、いつの間にか坊やはんは我が家の居候人になりはって。そやけど近頃母を見限らはって、私のフィアンセに立候補しやはったんどすえ」
 哀歌が勝手に、途中から生まれの京言葉を絡ませながら、こんな紹介をするものだから、「おいおい俺はそんな女たらしと、ちゃうで!」とボーヤが文句を付けると、「まあ、いいじゃないの、どちみちエイリアンなんだから」と軽く一蹴。
「宇宙人をバカにすな!」
 ボーヤは思わず声を荒げてしまったが、哀歌は澄まし顔であとを続ける。
「実はこの坊やはね、琵琶湖、そう、古代湖の底で2000年間眠っていたのよ。私たちにとって途方もなく長い時間、そこでは何も起こりませんでした。皆さん、これってどういうことかわかりますか?」

 いきなりの質問に他のメンバーたちはポカーンと口を開けたままとなる。それでもメンバーの一人が手を上げる。
「確か琵琶湖は世界で3番目に古い湖ですよね。つまり三重県の上野盆地辺りで、400万年前に誕生し、それから北へと移動して来たんじゃなかったっけ。そして今の位置になって、40万年の歳月が経ってますよね」
 これは貴重な情報共有、哀歌はスルーせず、パックリとこれに食らい付く。
「その通りよ。だから言い換えれば、湖底は少なくとも40万年間水に覆われたままで、人の手は入っていません、てことよ」
 このやり取りを一つ一つ頷きながら聞いていたサブリーダーがハタと何かに気付いたのだろう、さっと長い髪を掻き上げ、起立。
「琵琶湖の周囲には100箇所に及ぶ湖底遺跡があります。それに最近零戦も引き上げられましたよね。ということから考えれば、琵琶湖の底には手つかず状態でいろんなものが眠ってるということですね」
 これを聞いたトレジャー・ハンティングのメンバーたちは急に目を輝かせる。


作品名:古代湖の底から 作家名:鮎風 遊