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古代湖の底から

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 一方ボーヤにとっても、人間との初接触。さらに犬っころなる高等生物にも会えた。
 すべてがドキドキものであったが、面白かった。
 こうしてボーヤは家政婦さんに案内され、青白い月光が差し込む部屋へと通された。ここでホッとし、自分を取り戻す。
「ああ、もうクタクタだ。眠りたいよ」とごちるが、まだやらねばならないことがある。そう、キャプテンへ地上探索の報告をしなければならない。
 こうしてボーヤは、初秋の満月の夜に、月光を腹一杯食べながら第一報のメールを送ったのだった。

キャプテンへ
 本日、私は湖底より上陸を果たしました。
 そこで出会ったのがホモサピエンスのメス。
 妄想だけで生命を繋いできたミステリー作家です。
 しかし、最近はネタ不足のようでして、すべてに好奇心一杯で……。
 早い話しが――イッチョカミ。

 他情報によれば、どうも大阪を中心とした関西圏に生息する中年のメスに、
 その傾向が強いとか。
 されども、よく喋り、他人の肩を気楽にパンパンと叩き、くどいほど人懐っこくって、
 案外平和を愛する生物かなと推察されます。
 以上、これからも地上探索を継続します。
                  ボーヤより

 この報告に対し、了解した、さらに任務を続行せよ、ただし人間のメスに襲われる危険あれば即刻撤退せよ、と返ってきた。
これに、ああ、俺はまだ見捨てられてないなあ、と安心したボーヤ、初めての地上の夜、静寂に包まれ穏やかな眠りついたのだった。


作品名:古代湖の底から 作家名:鮎風 遊