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古代湖の底から

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 結局は火急的速やかに退去、これこそが最終結論だと全員は再確認する。これでチームとしての意識は統一された。そして今こそグッドタイミング。キャプテンが姿勢を正す。
「地球も、人間についても、理解できた。それでは帰還プロジェクトの次のステージに移ろう」
 こう全員に告げ、それから間を置かず、言い放ったのだ。
「ボーヤ、君にミッションを与える。我々がこの古代湖の底から浮上し母星へと帰るため、地上に行って、人間からの協力を取り付けてくること」
 おっおー、これは青天の霹靂(へきれき)だ。
「えっ、えっ、それって、僕ちゃん一人で? 行きたくな〜いですよ」
 まさに白鳥が豆鉄砲を食らったような表情で、ボーヤは訴えた。

「これは業務命令じゃ!」
 キャプテンの決断には揺るぎがない。それに輪を掛けて、アーネゴがそれはそれは恐い顔になる。
「ボーヤ、わかってるでしょ、この機体はお風呂の栓状態よ。なんぼ宇宙最新鋭の時空貫通円盤機だと言ってもね、水は苦手だし、水圧も掛かってることだし……、このままじゃ水面に上がれないの。そこで協力者がいるのよ、たとえ低知能レベルの人間でもね。さあ、行ってらっしゃい!」
 作戦責任者のアンチーヤンも親指を立てながら、「我々がこの星から脱出するためには、お前の活躍に期待するしかない。水面に出るために、小型潜水艇をすでにスタンバイさせてあるぜ。さっ、善は急げだ」と、ボーヤの背中をドンと押す。
 ボーヤは頭に来た。そこで一応、「こんな筋書きがとっくに仕組まれていたのですね。はめられた!」と叫んではみたが、これは所詮スワンの遠吠え。
 そこで、少し冷静に考えて、宇宙ではイッチョカミ星人の悪行がまだしつこく続いているかも知れない。それでもこのクルーの使命は、イッチョカミ星人をやっつけること。
 そのためには出来るだけ早くヨロシオマッ星に引き上げて、この円盤機のバージョンアップをし、2000年の時は経っているが、宇宙平和のために出直すべきだ。

 ボーヤはうーんと唸り、腕を組んだ。
 そしてその一瞬をアーネゴは見逃さなかった。ボーヤの耳元で、それとはなしに囁くのだ。
「義を見てせざるは勇無きなり」と。


作品名:古代湖の底から 作家名:鮎風 遊