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古代湖の底から

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しかし、ここにミステリーが。
 たった一つなのですが、なぜこんな所に、と。
 現在も謎が解けていない湖底遺跡があります。
 それは奥琵琶湖の、なんと水深70メートルの底から発見された葛篭尾崎(つづらおさき)遺跡です。
 単に水深7、8メートルの湖底遺跡なら充分あり得るし、理解もできます。

 されども水深70メートルに……、ともなれば、大いに不思議ですよね。
 弥生時代に、本当にそんな所に集落があったのだろうか?
 そして、なぜ水没したのでしょうか?
 人間たちは、世紀のミステリーだ! と大騒ぎしています。
しかしながら、我々はその原因を知っていますよね、キャプテン。

 ここまでとうとうと述べたボーヤ、大きく息を吸い込み、キャプテンの顔を覗き込む。この先のまとめは、キャプテン、お願いします、ってことだろうか。
 若造からこんなあうん、いや、脅迫っぽい催促を受け、コーワイは顎に手をやる。
 ここはカッとせず、親分らしく威厳を持たせ……。
「最近人間どもが発見した葛篭尾崎湖底遺跡、摩訶不思議と騒いでおるようだが、それは明らかに2000年前、水隠れの術で、この円盤機を小さな湖に降下させた時に捉(とら)えた集落、こう結論してよいだろう」
 ここまで君たちに異論はないなと、キャプテンは目で全員に確認する。それを終え、あとを神妙に続ける。

「水深70メートルの湖底遺跡、その原因は――、この機体を完全に水底に隠すため、湖の底に栓をした。その結果、湖の水位は異常に上がり、我々が葛篭尾崎の村を水没させてしまった、てことになる。この不幸を、今我々は知り、汗顔(かんがん)の至りである。それでは全員――黙祷(もくとう)!」
 この呼び掛けに合わせ、全員しばらく頭(こうべ)を垂れた。

 それを終え、アーネゴは「今の人間はこの事実を知らないし、思い付きようもないわ。だからミステリーなのよね。だけどもうこんな不幸を持ち込まないことを誓いましょう」と決意をみんなにごり押しし、「さっ、この星から早く立ち去りましょう」とみんなに呼び掛けた。


作品名:古代湖の底から 作家名:鮎風 遊