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古代湖の底から

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 アーネゴが縷々解説した人間評価は辛辣なものだった。
 だが、それでもふんふんと聞いていたキャプテン、「よくわかった。ならば、そのインターネットでより詳細に、この湖ならびにこの近辺について調査を進めてくれ」とニッと笑った。
 もちろんアンチーヤンもアーネゴも、そしてボーヤも好奇心が強い。すかさず三人は一斉に、――「ヨロシオマッ星!」と。
 それぞれがそれぞれの黒い鳥目をグルグル回し、高速コンピューターをチャッチャッチャッと操作し始める。

 それから30分ほど経過しただろうか、三人はちっちゃなミーティングを持ち、情報をすり合わす。それを終え、「ボーヤ、あなたが報告しなさい」とアーネゴから言われ、ボーヤはさっと手を上げる。
「キャプテン、まとまりました」
 これにキャプテンが目で話してみろと合図すると、ボーヤは一つコクリとし、おもむろに口を開く。
 その報告とは……。

 我々が乗るこの時空貫通円盤機は、JAPAN、つまり日本という国のほぼ中央にある、琵琶湖という湖の底に沈んでいます。
 このレークは古代湖。
 約500万年前に三重県伊賀という地方で誕生しました。それからゆっくりと北へと移動し、40万年前に比良山系にぶつかり、閉じ込められたとか。
一方、この琵琶湖とは関係なく、北の山間に、かって小さな湖が二つありました。その一番北の湖は現存し、余呉湖(よごこ)と呼ばれています。
 そして二つ目は、かって余呉湖から南西10キロメートルの辺りに、葛篭谷(つづらだに)と呼ばれる深い谷があり、そこに小さな湖がありました。

 古(いにしえ)の時代から時は流れ、そうですね、人間の時代で言えば弥生時代に当たりますが……。
 現在から2000年前に、私たちはこの北から二つ目の湖に自らこの円盤機を水没させたのです。
 そして、日本海と呼ばれる海の敦賀湾、そこへと繋がる地下自然水道があります。
 我々は湖底にあるその入り口に機体を被せました。
 このことにより、お風呂と同じように栓をしてしまったわけです。
当然、川から流入してくる水によって水位は上昇して行きました。

 この結果、小さな湖はどんどん大きくなり、南から移動してきた琵琶湖と合体しました。
 とどのつまりが、このプロセスを経て現在の形の琵琶湖になった、と言えるでしょう。
 観点を変えて述べれば、湖が肥大して行く変遷とともに歩んだ、周囲住民たちの歴史がそこにあるということでしょうか。
 ちょっと理屈っぽくなりましたが、その証として、琵琶湖の東岸地域では、水深7、8メートルの湖底から約100箇所におよぶ弥生時代の遺跡が発見されています。


作品名:古代湖の底から 作家名:鮎風 遊