ショッッピングモール
納得出来ないまま、私は通路に出て各部屋の店名の下に説明があるのを確認した。あまり近づくと自動ドアが開くので近寄れない。近寄らないと見えないほど小さい文字で説明が書いてある。(詐欺じゃないか)と怒りがこみ上げる。そうだ、電車が来るまでに何か食べようと思っていたのだと思い出すと、かなり空腹を感じだした。でも、ここは怪しいビルだ、外に出よう、そう思い出入り口に戻ろうと食券の販売機が目に入った。食券ならぼられる心配は無いだろう。そう思いボタンと一緒に並んだ文字を眺める。ん? B4、A4、B5、A5、B6。写真が無いので分からないが、これって紙の大きさじゃないか? ここはヤギたちが紙を食べるための店かと苦笑した。もう出費したくないおで金額の安いA5を選んだ。普段使用する紙がA4だから、何が出てきてもその半分なら何とか空腹を押さえるくらいにはなるだろう。
中に入ると紙の匂いではなく何か粉物の焼いたような匂いだ。ピザなら紙の大きさに焼けるからピザかな? ピザは好きなので少し期待が膨らむ。ビールも飲みたくなったが、もう予定外の出費があったばかりなので財布の中は寂しい状況にある。それよりも中の様子が変だった。回転寿司店のような作りなのに、回っているのは座席だ。すでに座っている客もいるのだから、やはりこれに座るのだろう。釈然としないままゆっくり回転している座席に着いた。
座った席のカウンターにA5と書かれたプレートと粉を溶いた中に干しエビだと思えるものが少量入っている容器が置かれた。置いたのはアンドロイドかと思えるようなつるっとした顔の無表情な女性だった。何の説明もないので、訊こうとしたら、カウンターの一部がスライドして鉄板が現れた。試しに粉を少し落として見たらじゅっと音がしてすぐに焼けた。私は容器の中身を鉄板の上に注いだ。焼け始めるのを見ながら、何もトッピングは無いのか見渡しても何も無い。これが焼けたら食べるだけなのか? 省人間と省食材化の店か。そんなことを考えている間に目の前の鉄板が回転して裏側を焼き始めた。依然として回転している席にいるので気分が悪くなりそうだった。でも空腹だ。空腹のせいか良い匂いに思える。
作品名:ショッッピングモール 作家名:伊達梁川