ショッッピングモール
「あのー、出口が分からないのですが」というと、「ちょっと待ってください。今計算をしますから」という。計算? 計算しないと出口の場所が出ないのかと思っていると、「8千円になります」と、受付の女性は事務的に言った。「えっ、私は間違ってここに入ってしまって出たいだけなのです」「でも、ITカメラが全部写してあります。視線がどこをどれくらい見たかもデータに残っております。ご覧になりますか?」
リュックを背負った自分が、女性の姿を見ている。すぐに目をそらせた筈が思った以上に凝視している。アングルが変わり、出口を探している自分は以外に時間が短い。その後、やはり女性のある部分を見ているだろう顔の向き、急いだつもりがゆっくり歩く自分の姿。
「私は初めてここに来て、知らないで入りこんでしまったんです。ここは風俗店なのですか」私は強めにそう言ったが、「いいえ、ここは最高の芸術を鑑賞させることを目的とした部屋です。ドアにそう書いてあった筈ですが」「でも」と私が言いかけると「まあ、事情はわかりましたので特別に千円だけ引いて7千円にしましょう。よろしいですね」「ああ、でも」と何か言おうとするが、頭が混乱したまま私は財布を出していた。
作品名:ショッッピングモール 作家名:伊達梁川