ショッッピングモール
また驚くことが起こった。鉄板がスライドしてからまた回転して目の前のプレートに焼けたものが入った。その後鉄板が隠れて今度はマヨネーズとソース、箸が現れた。一瞬食べるのを忘れるほどの仕掛けだ。
可も不可も無い空腹を満たす食事にはなった。回転方向に出口が見えたので席を立った。歩き始めると平衡感覚が少しおかしくなっていて、よろよろと出口に向かった。
さて駅へ行くための出口はどこだろうと案内板を探したが無い。通路を歩き出して、最初に出合った老人に尋ねたが、訛りがあって全部は分からなかったが、指さす方に歩いた。案内図を無くして、まんべんなくあちこち客を誘導する魂胆だろう。
さらに何人もの人に訊いて、どうにか建物の外に出て駅に向かった。もう時間の余裕は無い。急ぎ足でどうにか駅の見える場所まで辿り着きほっとしたのだが、嫌な予感がした。駅に向かう人は少なく、反対に大勢の人々がこちらに向かってくる。人並みをかきわけ駅に着いた。聞こえてくる声は「明日にならないと」「崖崩れ」「ばかやろう」「困るわ」などなど。
駅員がバスの振り替え券を配っていたり、遠距離に戻るひとのための臨時宿舎の案内をしていた。「なんてこった」と言葉に出る。
駅員の前に並んで、とりあえず今夜の泊まる場所の券をもらった。無料で一泊できるのはいいが、場所はあの訳の分からないショッピングモールだった。
end
作品名:ショッッピングモール 作家名:伊達梁川