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東京人コンパ

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「僕はこの漠然とした不安に未来の東京の危機を重ねた。東京が消えてゆく。東京から何かが完全になくなってしまう。僕がもし仙人のように、世の中のことを熟知して、物事を見通す目があればその何かというものを上手く説明できるんだろうけど、恥ずかしい話、僕はただ不安を感じることくらいしかできなくて、何かが消えてくという表現しかできないよ」
「社会が憎いよ。でも部屋でただ一人で膝を抱えて震えてるだけじゃ駄目だってことくらいよく分かっているよ。僕には何もできないよ。僕は矛盾屋でいつも脅えているよ。社会が本当に憎いよ。社会が本当に憎いよ」
 その時ステージに上がった警察官の一人が僕に手錠をかけた。
「宮澤薫午後四時二十三分業務執行妨害で逮捕!」
 複数の警察官も杏や晴菜、忠信、久美ともみ合っている。
 報道陣からのフラッシュの嵐だ。 
 渋谷の大きなテレビで報道されている。
 “本日午後四時二十三分渋谷区渋谷でジャックナイフのバンド宮澤薫を業務執行妨害または不法行為など容疑で逮捕しました。渋谷で暴走族を集め、騒動を起こし、複数の警察官が負傷を負っています。この騒動の主犯格と思われるのジャックナイフのバンドボーカル宮澤薫がたった今逮捕されました。
「警察だ」そう言って杏ともみ合っている警察官は杏の髪を引っぱる。早見がステージの上に上半身を乗り出し警察官を振り切ろうとしながら、
「お前達女の子に対してそんな扱いねえだろ」
「そんなこと言えた口か、てめえら」
 僕は一切の抵抗をせずただみんなに、
「ごめん。ごめん。みんな」そう言った。 
「宮澤薫こっち来い」警察官が僕をステージ裏へ誘導する。杏も手錠をかけられた。
「みんなごめん」
 晴菜も手錠をかけられた。早見も。忠信も久美も手錠をかけられ、久美はうなだれている。
「どけ貴様ら」警察官がステージで僕らを確保する。
「ごめん。みんな本当にごめん」
 杏は涙を流す。涙ながらに
「薫は間違ってない。薫は間違ってない」そう言った。
 そして僕達の騒動はこうして終わった。

作品名:東京人コンパ 作家名:松橋健一