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東京人コンパ

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 十二月二十四日午前四時三十分十和田市夜明け。あたりはまだ暗い二十四日の夕方決行の予定だ。忠信が車で東京まで連れて行ってくれる。東京で協力してくれる音響の会社と午後三時に会う約束をしてる。東京の渋谷で決行だ。協力してくれる会社は芸能界のはしくれの会社だ。僕達のこの計画に協力してくれる会社なんてそんな会社くらいだ。
 十和田市の夜明けの国道で、僕の吐息は白いのがはっきり分かる。
「僕達のこれからすることは犯罪だ。みんなこの犯罪に加担することに反対はないか?」
「ないわ。全然」杏が言った。
「いろいろ将来生きていく上で不都合になってくるかもしれない。それでもいいか?」
「最初からそのつもりよ」
「よし。出発だ。国道四号をひたすら走るぞ。目的地は渋谷だ。東京の渋谷」
 僕達は暗い夜明け前をひたすら走った。
「仙台あたりまで雪があるから早く走れない。時間がかかると思う」
 早見と幸久と沙織は早見の車で前日から東京に向かった。早見は東京の走り屋と、暴走族を集める手はずをとっておいた。住職にも挨拶に行った。住職は何も反対しなかった。
 朝の十時頃仙台あたりで僕達は牛乳とクリームパンを買って食べた。クリスマスイブに牛乳とクリームパンだ。
 昼はもう食べない。いい声を出すため食事は控えた。クリームパンを食べながら皆、車の中で
「メリークリスマス」そう言った。午後一時頃東京に入った。
 杏は不安そうな顔をしている。
「早見上手くいってるかなあ」
「早見の助けがなかったら僕達は一分で中止にさせられる。願うしかないさ」と僕が言った。
 東京の広尾で沙織と落ち合った。
 明治通りを通って渋谷に出る手はずだ。
 沙織が暴走族の奴らともめている。
「どうした沙織?」僕が言うと、暴走族はただならぬ剣幕で叫んでいる。
「早見はどこだ?早見はいないぞ。早見の頼みと聞いて来たんだぞ。早見はどこだ」
 そこを早見が現れた。
「早見だ。本物だ。」暴走族の連中は歓声を上げた。
「ジャックナイフの宮澤薫と小柳久美もいるぞ」
「みんな協力してくれるね?」沙織は言った。
「ああもちろん」
「早見千葉に行ったんじゃないの?」沙織が早見に訊いた。
「千葉?」僕が訊くと、
「すまん。千葉の連中の大半が俺が来ることを信用していないらしいんだ。だから今から千葉に行ってくる。一人でも数がいた方がいいだろう。俺の愛車なら片道一時間で行ける。でも多分三時には遅れるだろう。始めててくれ」と早見は言った。
 早見が千葉まで走ってくれる。僕達は音響の会社と落ち合った。
 音響の会社は渋谷の宮益坂と道玄坂に接したステージで偽のインディーズのクリスマスライブをするため場所を確保していた。そうしてすばやく音響をセットした。モタモタしていると偽のライブだったことがばれる。もうここからゲリラライブは始まっているんだ。
 五十分が経ち早見が千葉に着き、千葉の暴走族と落ち合った。
「みんな加担してくれるな?」早見は皆に訊いた。
「おう、もちろんさ。早見さんの頼みじゃ断れねえよな。みんな」
「おう」
 早見は車から離れて沙織に電話した。
「こっちは大丈夫だ。千葉の奴らはみんなそっちに向かってくれてる。俺も今から向かう。あっ!」
「どうした早見?」沙織が訊くと、
「俺の愛車のランボルギーニ・カウンタックの周りにマッポが」
「マッポ?警察のこと?」
「そう」
「どうすんのよ」「あいつらが離れるの待つしかない」
「時間ある?」
「とにかく待つしかない」
 もう三時まで一時間を切っても警察官はランボルギーニ・カウンタックから離れない。そして二時十五分、
「お前数年前の大森の早見だな。この騒動はお前の仕業か?署まで来てもらおう」
 警察官が早見に近寄った。早見はとっさに逃げた。
「待て早見」
「やべえマッポがこんなとこに」
 早見は五百メートルを走ったところで、今度は前方にも警察官が現れた。
「やべえ、八方ふさがりか。チクショウ。これまでか」
「これで終わりだ。早見」
 そのときだった。後ろからかなりの馬力のエンジン音が鳴った。そう早見の目の前に現れたのはフェラーリだった。そしてフェラーリは早見の前に止まった。窓が開き
「乗れ早見」
「その声……」
 早見はすかさず助手席に乗った。そして車は走り出した。かなりの馬力でフェラーリは発車した。車の運転手はまぎれもなく住職の紫雲無道だった。
「おっさんどうして?」
「お前達を追っていた」
「こんな車おっさん運転できんのかよ」
「わしも若い頃はそれなりに暴れてな」
「でもこんな高級車どうやって手に……」
「住職をしているとな、結構こういう車が買えてしまうものなのだ」
 そう言って紫雲無道はアクセルをめい一杯踏んだ。
「すげえ。俺も本物を見るのは初めてだ。この車ならマッポも振り切れるかも」
「よし京葉道をひたすら走るぞ」
作品名:東京人コンパ 作家名:松橋健一