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東京人コンパ

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 昔、行者が修行の途中病にかかり、ここの水を飲んだところ不思議と病が治ったことから、ここに住み着いたという言い伝えがある。
 僕はその湧水を一度口に含み、口をすすぎ、ペっと口から吐き出す。また口にし、その湧水を飲む。
 本当にすがすがしい気持ちだ。
 大学が終われば東京に帰る。もうこの十和田の街をこうしてジョギングすることも森林に囲まれることもなくなってしまうだろう。
 ああ、ダーツバーが僕達の最初の居場所だった。
 東京人コンパがそもそもの始まりだった。
 あれほど恋い焦がれた久美と二人で暮らしている。芸能界でも活動をした。
 僕はジョギングをし、息が切れそうになっても、ひたすら走り続けた。十一月の十和田は雪が降ってもおかしくない気候だが、僕はそのとき、汗が顔から滴り落ちていた。
 僕は十和田神社まで走った。言い伝えのある神社だ。
 
 十和田湖伝説のなかで、八の太郎と「南祖坊」が七日七晩争い、八の太郎は追放され「南祖坊」が十和田湖の主となったというが、あの「南祖坊」は実在した人物と言われている。
 
  十和田湖は、この七崎永福寺の修験僧たちの活動によって開山された。時期としては平泉時代(千百年代)と思われるが、当時は深山の中に抱かれた湖であり、霊山聖地としてふさわしい世界であった。特に十和田湖中心の中山・小倉半島には修行の場にふさわしい多くの岩山や修験窟、神を安置したとみられる岩窟も実在する。

 「南祖坊」は十八歳の時、櫛引当馬の娘と結婚する話がもち上がった。
 「修行の身ゆえ」と断ると、娘は高い崖の上から身を投げ出し亡くなった。そこから松の木が生えて、「姫の松」と呼ばれたという。そして今も斗賀神社がこうしてあり、神社裏手の山中には十和田神社があり、「南祖坊」が祀られている。
 僕は神社で手を合わせてお参りをする。
 
 僕の心は異様に静かになっている。本当に静かで穏やかだ。それでいてとてもあつい
 
 僕の中で魂の鼓動が脈打っている。そして僕はある「決意」をした。あることを「決行」しようと「決意」した。
 
 それは僕の今までの人生の中で一度もなかったほどの、強い「決意」だ。自分でも恐いほどの強い「決意」であり、あの弱かった僕がするとは思えないほどの「決意」だ。
 僕は思った。
“よし。やろう。みんなを呼んで必ず”
作品名:東京人コンパ 作家名:松橋健一