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東京人コンパ

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「あんな写真撮られて私達の夢が台無しになったら、どうするのよ。みんなに責任とれるの?一人でやってるんじゃないのよ。私がどれだけ苦労してここまでやってきたか」
久美はソファにうなだれた。
「ごめん。モデルとは関係はないけど写真を撮られたのはうかつだった」
「うかつだったで済まないわよ。私達のバンドはもう終わりよ」
「そんなことないよ。今度テレビでちゃんと弁解するよ。分かってもらえるさ。やましいことなんて何にもしてないもん」
「そんな甘い世界じゃないわよ」
「じゃあどうすればいい?」
「私ミュージシャンなんて諦めるわ。あなたとやってく自信がない」
「それでどうすんだよ。せっかくもうすぐお金が入るのに」
「もっとお金が入る歌舞伎町なんかでソープ嬢として働くわ。高級ソープ。あんたと組んでいるよりそっちの方が百倍ましよ」
 僕は久美の顔をひっぱたいた。
「痛ーい。叩かなくてもいいじゃない。あなたの反応を確かめるために試しただけよ。冗談に決まってるじゃない」
「そんな確かめ方しなくてもいいだろ」
 久美は半ばヒステリックにドタドタ冷蔵庫の方に歩き、ビニール袋に水と氷を入れ頬を冷やした。久美は泣きながら、
「痛―い。痛―い」そう言うのだった。
 僕は週刊誌をビリビリに破り、ソファに身を委ねた。その間中久美はずっとヒステリックに泣いていた。
「痛―い。痛―い」と氷水で冷やしながら言った。
 ああ僕達は一躍有名になって、忙しくなってるけど、本当に正しい方向にいっているのかなあ。僕達はどうなってもいい類の人間なのか。みすぼらしい様だよ。僕達は。
 久美は相変わらず痛いと言いながら、皮肉的に氷水で頬を冷やして泣いていた。
作品名:東京人コンパ 作家名:松橋健一