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東京人コンパ

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 五時に修了式は終わり、七時の飲み会まで、まだ二時間近くの時間があるから、市内の喫茶店で、僕と久美と杏と晴菜と忠信でコーヒーを飲んで時間をつぶした。
「良かった。講義を受けられて。早く仕事がしたい」と僕は言った。
「私もやっぱり勉強って大事と思った」と晴菜も言った。
「でも二人の先生意見が対照的よね。どちらの先生がいい?」と久美は言う。
「私、後藤先生、介護は綺麗ごとじゃない。全く同感だわ。優しくても優しさが実践できなきゃ意味ないでしょ」と杏は言った。
 それに対して久美と晴菜と僕は生田先生側の方だった。久美は言った。
「私は生田先生。やっぱり寄り添うって大事だと思う。私達は介護員になるのだから特別医師や看護師みたいにプロフェッショナルな治療ができないから、ただ聴いてあげるだけでも、介護を受ける側はすごく助かると思う。生田先生の意見に感銘を受けたわ」
 僕も同じような意見だった。
「僕も生田先生側にいるというのは弱さからきているのかもしれないけど、でも僕達にできることは寄り添うこと。一緒に聴いてあげることじゃないかな。忠信はどう思う?」と僕は忠信に訊いた。
「うーん。どっちつかずでずるいと思うかもしれないけど、どっちの先生の言ってることも大事じゃないかな。どっちかが欠けてもいけない。どちらの先生の言うことも大事」と忠信は言った。
「でも、あの二人の先生雰囲気も、言うことも対照的、ウマが合うのかしら?二人って犬猿の仲じゃないの?今日飲み会で二人が会うでしょ。大丈夫かしら。私達どちらの先生をたてればいい?どちらにつけばいい?」と晴菜は言った。
 みんなでそんなことを心配していた。
 ただその心配はとり越し苦労なのか、飲み会の席で後藤先生と生田先生が会うなり、
「いやー。どうも。どうも。いつもお世話になっています」
 ずいぶん親しげな仲だ。
「国保連の請求、区変の申請、月末までに終わらせないといけないので、講義との掛け持ちは身がもちませんよ」
 二人の先生はお互いケアマネジャーの資格を持っている。
 僕達はただ、ただ、あんなに対照的だと思ってた二人がこんなにも仲がいいということに驚かされたのだった。この不思議今後僕達の間で、ずっと語りつがれる謎だった。
作品名:東京人コンパ 作家名:松橋健一