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東京人コンパ

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 彼女はまた聖書を読んだ。
「彼がこのことを思いめぐらしたとき、主の使いが夢に現れて言った『ダビデの子ヨセフよ、心配しないでマリヤを妻として迎えるがいい。その胎内に宿っているものは聖霊によるのである』
 彼女はそう言ってブラジャーのホックをはずした。
 彼女の優しい美しい乳房が露わになった。また僕と久美はキスをした。
 僕の心は完全にいっちゃっていた。彼女の虜になっていた。心を盗まれたようだ。生まれてこのかた味わったことのない官能的な快楽。僕の下半身はとっくにうずいていた。それでも彼女の奉仕はまだそのときはほんの序章に過ぎなかった。
「マタイ福音書の続きを読むわね」
 そう彼女は乳房が見える姿で朗読した。
「彼女は男の子を生むであろう。その名をイエスと名付けなさい。彼は己の民をそのもろもろの罪からのことが起こったのは、主が預言者によって言われたことの成就するためである」
 そう言って今度はパンティーに手をかけた。彼女は少しためらっていたが、ゆっくりそれを下した。
 彼女は裸になった。
 そこに僕の目の前にあったものは生まれたてのナイーブな裸だった。
 真っ白な本当に本当に美しい聖裸だった。
 彼女は裸で僕に抱きつきキスをした。
「そろそろチキンが温まったころよ」彼女はミトンをしてチキンをアルミから外し、皿に盛りきのこのスープを二つのカップに移した。彼女はテーブルに二脚の椅子の一脚に座るように僕を促した。
 僕は座り、彼女も座った。
 彼女は赤ワインを出し二つのグラスに注いだ。
「どうぞ召し上がれ」
 そう言って僕達は赤ワインを飲み、チキンをナイフとフォークで切りながら食べ、きのこのスープを飲んだ。
 僕の目の前には乳房を露わにする久美がいる。彼女は白いふわふわのスリッパ以外は何も身にまとっていない。
 性欲と食欲が同時に満たされる瞬間だった。生まれてこれまでに味わったことのない官能的な食事。明日死んでもいい。それくらい僕は満たされていた。僕達はその官能的な食事を終え久美はまた僕をベッドに促した。
 
 彼女はフルートを出した。

 そして僕の目の前でフルートを一糸もまとわぬ姿で演奏した。

「どう?気分は?」
「最高だよ。明日死んでもいいくらい」
「嬉しい。喜んでくれるの最高の快感よ。私には昔から、こういう奉仕欲があったの。誰かにとてつもなく奉仕したい。でもそれをやったことは一回もないわあなたが初めてよ。今、私すごく感じてる。見られて感じてる。あなたの視線ものすごく感じるわ」
 そうして久美はまたフルートを演奏した。
「どう我慢できなくなったでしょう?」
「うん。こんなとき何もできないなんて我慢できない」
「おあずけよ。私のペットちゃん」
 そう久美はいたずら顔で小悪魔のように笑った。そうしてベッドの僕の隣に座った。
「どう気分は?」
「最高。抱きしめていい?」
 彼女はコクンと頷いた。僕は久美を抱きしめた。僕は彼女の上になって二人でベッドの中に入った。抱き合いキスをし、キスをして抱き合った。
「いいことしたい?」
 彼女は訊いてきた。
「是非したい」
「どうしよっかな」
「そりゃないよ。こんな気分にさせて」
 彼女は悪戯に笑った。僕は彼女の優しい乳房を見た。彼女は僕の手を取った。
「そっと優しくね」
 久美は僕の手を彼女の乳房にのせた。とても柔らかかった。
 僕は彼女の胸に手を当てながらキスをした。
 しばらくそうしてずっとキスをしていた。
「私の身体どうにかしたい?」
 彼女はまた小悪魔のような笑みを浮かべた。
「もう我慢できないよ」
「ねえ、おあずけよ」
 そう言って彼女は僕のパンツに手を入れあれを握った。
「おもしろい。動いている。生きてるみたい。あなたのあそこ」
「脈を打っているだろ。我慢できないっていってるんだよ」
「あそこがしゃべるの?」
 彼女は笑いながら訊いてきた。
「あそこも意志を持っているんだよ。やりたい、やりたいって」
「気持ちいい」
 彼女は手を動かした。しかしすぐやめてしまった。
「どうしたの?」
「お・あ・ず・け」
「そんな。ここで何もしないなんてまるで拷問だよ」
「そうよ。拷問よ。あなた私としたいなら私を本当に愛しているか言いなさい」
「愛している。久美のこと愛している。いつもなんて可愛らしいんだと思っていた。生きた芸術のような顔立ち。優しい声」
「そう?本当にあたしのこと好き?」
「好きだ。好きだ。大好きだ。愛している」
「じゃあ、ごほうびよ」
 彼女はまた手を動かし、そしてすぐやめた。
「ええ?またおあずけ?ひどいよ」
「シッー」彼女は僕の言葉を「シッー」と言って遮った。
「いいことしたい?」
「しようか」
「でもね。私初めてなの?分かる?初めてだからきっと痛いわ。そっとやるって約束してくれる?」
「うん。もちろん」
 僕も服を全部脱いだ。
「宮澤君。けっこうたくましい身体してるのね」
 そう言って彼女は僕の胸板に頬を当てた。
 二人でベッドで裸で抱き合った。
 そうして僕は彼女のあそこを指で愛撫した。
「少しいじってから入れてね。そっとよ」
 でも彼女はビッショリ濡れていた。
 しばらくして僕は彼女の中に入った。
「痛っ」
 彼女は痛がった。夢の中での久美は少しも痛がってなかったが、現実は痛がるものだ。
「ごめん。大丈夫?」
「うん。ゆっくりね」
 僕はそっと動かした。
 二人でむさぼるようにキスをした。
「どう?気持ちいい?」
 僕は彼女に訊いたが、
「気持ちいいけど痛いな」久美はそう言った。
 しばらく動かすのはやめてキスをした。
 そしてしばらくしてまた動かした。
「いっちゃう」と彼女は声を出した。
「二人でいけてよかったね」
 またキスをした。何度も何度もキスをした。僕は久美のおでこや、頬、首、いろいろなところにキスをした。
「よかったよ。本当によかった」
「私初めての体験」
「僕も初めてなんだ」
 ロッジの窓の外には星が見える。
「きれいな星ね」
 そのとき雲から月が出てきた。
「ほら、月光がこんなに明るく」
「綺麗ね」
「二人で朝まで語り明かそうか」
「うん。ホットチョコレートがあるの。一緒に飲みましょう」
 僕達は二人でホットチョコレートを飲みながら、今までどんな学校生活を送っていたかとか、好きだった先生、嫌いだった先生、将来のこと。いじめの問題、人間は実はみんな弱いものだという話をした。
 そしてまた、なぜ競馬で引退する馬は最後のレースで優勝するのか。馬は何を感じるのか。
 またアインシュタインは子供のころ成績が良くなかったのは本当か?彼は十分に睡眠をとる大人だったこと。彼がユーモアが好きだったこと。そのことについても話した。僕達はいろいろな話題で盛り上がった。
 よくマイナスイオンとか言うが今ここ十和田湖畔はマイナスイオンがそこらじゅうにあるのではないか。もし二人が一緒に暮したら、おいしい水、水素水を飲んだら身体にいいんじゃないか、そんな話もした。
作品名:東京人コンパ 作家名:松橋健一