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東京人コンパ

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 僕はいつものダーツバーに行った。そこに杏がいた。
 二人でコーヒーを飲みながら話をした。
「ねえ、宮澤君、あなたまだ久美のこと想っているの?」杏が僕に言った。
「まあそうだね。会うことはできないけど」
「ねえ、宮澤君。あなたのために言うわ。久美の父は犯罪者なのよ」
「まあ、そうだけど、久美自身が犯罪を犯したわけじゃない」
「でも久美はここの店の発注をいじったわ。小さくても立派な犯罪よ」
「そうさせる何かがあったんだ」
「ねえ宮澤君。確かに久美は絶世の美人で誰もが想いを寄せるけど、あなたは普通の人、犯罪に関わる人の気持ちまで酌まなくてもいいと思うの。私じゃだめ?確かに顔は久美に劣るけど、私は人の道に反するようなことはしないわ。いつも幸せについて考えている。あなたと一緒になれたら毎日あなたとの幸せを考える。ねえ、私じゃだめなの?」
 そのときドアが開き晴菜が入ってきて、話が中断された。しばらく三人でコーヒーを飲んでいたら晴菜は、
「宮澤君話があるのちょっとこっち来て」そう言って僕を店の奥の方に呼んだ。
「久美のことだけど」晴菜は言った。
 そう切り出して、先程の杏の話と同じようなことを言った。
「私じゃだめ?」晴菜もそう言った。そのときドアが開き、沙織が現れた。話は中断された。今度は四人でコーヒーを飲んでいるとき、「ちょっと」沙織が言った。
と、僕を呼び出し二人で話をした。
「宮澤君、私ずっと待っているって言ってたでしょ。久美の人柄もわかったでしょ。今は姿もないし、私達付き合っちゃいましょ」そう言って、杏と晴菜と同じような話をした。そのとき早見が現れ、話は中断された。
 五人でコーヒーを飲んでいたが、当然、早見は僕を呼び出すことはなかった。代わりに早見はなんかぼやいている。
「くやしいなあ。無様なカッコみられて、まるで喧嘩に負けたみたいになったしなあ。喧嘩は負けたことないのになあ。くやしいなあ」そう言ったが、杏はSなので、
「いいのよ。そのおかげで、イーグルビール五万円分儲かったんだから。御馳走様、早見君」
「もう一回十対一でもいいからやり合いたいなあ。あのとき油断してたからなあ。今なら十対一でも負けないのになあ」
「いいのよ。もう喧嘩なんかしなくて、ボロボロにされてゾンビになってももう賞金は出ないんだから」と杏が言った。
「だから、ボロボロにされねえし、ああ、誰か喧嘩する相手いないかなあ」
「宮澤君に喧嘩吹っかけたりしないでよ」と沙織が言った。
「分かってるよ」早見がそう言うと、晴菜が、
「でもここの店員がたいがいい人ばかりじゃない。あの久慈君だけは小さいけど」
 店員の一人が、
「喧嘩ですか?いいですよ。でもあの久慈ってやつも、合気道の有段者らしくて……」
「そうなの?久慈君」
 沙織が訊いた。
「ええ、まあ、一応合気道八段です」
「八段てすごくない?」
「じゃあ、早見、久慈君に相手してもらえば」と僕が言った。
「そんな、やべえよ。こんな子怪我させちゃ悪いよ。もっと血の気のあるやつ」
「あ・あ・あのぼ・僕やってもいいですよ。喧嘩」
「本当に?」
 杏も晴菜も沙織も驚いた。久慈君は、
「でもやるんなら外でやりましょう。店の物傷つけたら、弁償しないといけない」
「おいおい俺はいいけどよ。知らねえぞ。俺は大森の早見と言われ、百戦百勝の男だぞ。知らねえぞ」
 そう言って早見と久慈君が外で喧嘩をすることになった。
「悪いが手加減しねえぞ。俺は」
 早見が言った。
「い・いいですよ」
 そして早見が先制した。
「こいつは挨拶代わりだ」
 そう言って久慈君にパンチを出した。その拳は空を切った。久慈君はパンチをよけた。
「あれつ?よけるのだけは上手いのか?」
 そう言って早見が何度も浴びせるが、久慈君はみんなひょいひょいかわし、一発も当らない。頭に血が上った早見は、
「おりゃああ……」と言って大ぶりのパンチを仕掛けた。
「すると久慈君はここぞとばかりそのパンチをつかみ巴投げのように転がり拳を吹っかけた勢いを利用した。そして早見が空中に吹っ飛んだ。高さは二メートルくらい、そして距離は、
七、八メートルといっても大袈裟でないだろう。
 早見は高く高く吹っ飛ばされたのだ。
「何今の?早見が吹っ飛ばされた。どうやったの?」杏は言った。
「すごい超能力みたい」晴菜も言った。
「はい、完璧に久慈君の勝ち。久慈君カッコよかったよ」と沙織は言った。
「すげえ久慈君」とみんなの称賛の声が止まなかった。
 久慈君は、早見に近づいて、
「だ・大丈夫ですか?け・怪我はないですか?」
 そう声をかけた。
「どうなってんだ」と早見は、鳩が豆鉄砲を食らったような顔をした。皆でまた店に戻った。早見は呆気にとられ、
「俺負けたのか?負けたのか?」
 そう言うので杏がきっぱり、
「そう負けたの」
「何で負けなしの俺が」
「でも私達負けたところしか見たことないし」杏がそう言った。
 その晩は杏と晴菜と沙織から、それぞれ、
「あの話考えといてね」といった内容のことを言われた。
 
 そしてその晩家に着いて、夕飯を食べた。ブリ大根のお惣菜を買ったので、それとご飯を食べた。

 するとまた非通知で電話がかかってきた。
作品名:東京人コンパ 作家名:松橋健一