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東京人コンパ

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 ある晩のことだった。僕は一人アパートでスパゲティーカルボナーラとインスタントのオニオンコンソメのスープを飲んでいたときだった。携帯電話が鳴った。番号は非通知になっている。まただ。
「もしもし宮澤です」僕が出ると、
「わ・た・し」
 そう女性の甘ったるい声がした。やはりそうだ。聴き覚えがある。この間のいかがわしい電話をかけてきた女性だ。久美の父親の話題をし、その後に久美の父は捕まった。この人は一体?
「覚えてるでしょ?私のこと」
「はい」
「よかったー。忘れていたらおしおきよ」
「ねえ。今晩は何をしていたの?一人アパートで。ひょっとしてHなDVD?ねえそんなたまってるなら言ってくれればいいのに」
「今日は何ですか?」
「まあ、お堅いのね。今日はどんな格好してると思う?クイズよ。私の今しているカッコを当ててね」
「一番ベージュのシュガーファーワンピースに白いソックス」
「二番白いカットソーにデニムのジーンズ」
「三番黒のソックスだけで上は裸、さあ何番でしょう?」
 僕は黙っていた。
「ねえ何で黙ってるの。当ててみて。当たらなくてもあなたの希望した番号のカッコになってあげてもいいのよ。ねえ、何番のカッコしてもらいたい?」
「あなたの目的は?」僕がそう尋ねると、
「私の質問に答えてよ。じゃあ今私のカッコ何番だか当てたら真面目に本筋の話をしてあげる」
「じゃあ三番」
「正解。よく分かってるじゃない。じゃあ、三番のカッコしてもらいたかったってこと?ふふ可愛い。よく当てたわ。お利口さんね」
「約束です。本当の趣旨を教えてください。あなたと久美のお父さんとどういう関係なんですか?」
「久美のお父さんの関係って何?嫉妬してるの?」
「真面目に答えてください」
「久美のお父さんは捕まったわ。だからもう終わったこと。可哀想ね久美ちゃん。姿を消したんでしょ?」
 この女性は久美が消えたことも知っている。いろいろ事情を知っているということか?
「あなたは、久美の今いる居場所を知っていますか?」
 僕は是非訊いておきたいことを訊いてみた。もしこの女性が知っているのなら。
「悪いけど居場所までは知らないわ。でも十月の中旬に大学のカウンセリングを受けそれを機に大学には行っていない。その後はどこかの男の家にいるんでしょう?」
 僕は黙った。
「どうしたの?あなたも久美さんのことが好きだったっけ?嫉妬してるの?いいじゃない。あなたには私がいるんだから」
「あなたとは電話だけの関係でまだ見知らぬ間柄です。もしあなたが何か事情を知っていないのなら、最初から電話は切ります」
「立場が逆よ。私はあなたから事情を聴きたいと思っているの。あなたに訊きたい。ねえ宮澤君」
「何ですか?」
「あなたのお父さんのことだけど……」
「僕のお父さん?」
「そうあなたのお父さんのことで何か知っていることない?隠していることとか?」
「さあ、父とはもう半年も会っていないし、電話くらいしか……」
「それでもいい。大学に入る前のことでもいい。何か知らない?」
 僕はしばらく考えたが何も思い浮かばないので、
「分かりません。私の父が何か?何かしたんですか?」
 そうはっきり言った。向こうはしばらく黙っていた。
「本当に知らないようね。じゃあ今晩はいいわ。しばらくおあずけ。また何か分かったら教えてね。電話だけで物足りないかしら?ホテルの方がいい?いずれにしてもまた今度ね。おやすみダーリン」
 そう言って切ってしまった。何だろう。今度は僕の父のことも訊いてきた。彼女の目的は?だが久美の父は捕まったから、もう終わったことと言っている。情報を集めるのが目的?そういう仕事といったら……」
作品名:東京人コンパ 作家名:松橋健一