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東京人コンパ

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 ダーツバーで僕と幸久と、晴菜と杏と沙織で小エビのフライを食べながらイーグルビールを飲んでいた。沙織が、
「久美のことはよく分からないけど、きっと久美にも久美なりの深い事情があるのだから優しく接してあげよう」
 みんなそれで意見が一致した。

「じゃあ、どう説明するんだよ?」
 厨房の方から荒っぽい声がする。
「い、いや、ほ、ほ、本当に知らないんです」
 怒られているのはあのどもりのようだ。
「まあ、まあ、まあ」
 早見が店員とどもりの間に入ってなだめている。
「いえ。ミスでは許されません。金銭トラブルは信頼の問題ですから」
「早見君。どうしたの?」
 沙織が訊くと、早見は説明した。
 発注したイーグルビールは全部で二百本だったが、何故か四百本発注と書き加えられている。そしてその発注した日の当番があのどもりだったらしい。
「お前しかいないだろ」
 そこに久美が来た。
「どうしたの?」
 久美が訊くと、今度は沙織が久美に説明した。そして沙織が言った。
「あの、その何とか君。名前はなんていうんだっけ?」
「く・久慈です」
「久慈君ね。ちょっと来てくれる?」
「いいんですよ。こちらの問題ですから」
 怒っている店員は僕達にそう言った。
「いや、いいから久慈君ここにきて。そしてその紙にボールペンで四百という数字を書いて」
「えっ?す、数字をですか?」
 久慈はそう言って数字を書いた。
「店員さん。発注書の紙を持ってきて」
「えっ、はい。これです」
 沙織は久慈が書いた紙と発注した紙をよく見比べた。
「おかしい。これ久慈君の筆跡じゃないわ」
「そうだよ。確かに違う」
 僕もそう言った。
「そもそも久慈君がそういうこと出来る人じゃないでしょ?みんなもそう思わない?」晴菜は言った。
「私の知っている久慈君はいつも自信はなさそうにしているけど、心の中が、本当に綺麗な人。私には分かるわ」と久美は言った。
「久美の言うとおりだ」
 沙織も晴菜も杏もそう言った。
「じゃあ誰が……」
 早見が、
「とにかく俺達が二百本しか頼んでいないことが分かればそれでいい。今後誰かに書かれないように発注の紙を厨房の奥にでも置いておいてくれよ」
 そう言って話がまとまった。
 
 忠信と早見と沙織と晴菜と杏と僕でまた八戸へスキューバーダイビングに行った。
 柿の種とイーグルビールを大量にマイクロバスに積んでいった。
 
 そしてみんなで海中散歩をした。
 
 八戸も結構、綺麗な海だった。

 小さなハゼが見られた。茶色と白のしまのクマノミや黄色に黒のしまのチョウチョウウオも見られた。
 海上を見上げるとダイヤモンドのように太陽の光が波の光を照らしだしている。海から上がろうとしたとき、早見は片手にサザエを持っていた。
「それ海に返してこい」と忠信が言った。
 そう言ったが、早見が一個くらいいいじゃないかと反論した。それでも忠信は譲らなかった。密漁は本当に重い犯罪らしい。
 ただ、早見は黙っていなかった。
 皆でイーグルビールを飲もうとしたとき、早見は海辺近くの魚屋の方に行った。何やら交渉しているらしい。
 そして早見は笑顔でザルを持ってきた。早見の持ってきたザルには大量のサザエやアワビがゴロゴロ、エビやイカもあった。
「どうしたの?それ?」
 杏が言った。
「売れ残った魚介類とこの柿の種とイーグルビール十本を交換してくれないかって交渉したらさ、売れ残ったやつでいいなら、好きなだけ持っていきなよって。その代わり今日中に食べてくれ」って早見が言った。「塩と醤油と網も借りてきた」そう付け加えた。
「すっげえ」
 みんな感嘆した。
 安く手に入れたイーグルビールをサザエやアワビに変えるんだもんね。とんだわらしべ長者ね」
 杏がそう言った。
 そして皆で海辺で、サザエやアワビを焼いて食べた。エビは塩焼きにしてイカには醤油をつけ、皆でイーグルビールで乾杯した。
作品名:東京人コンパ 作家名:松橋健一