第六章 飛翔の羅針図を
「当たり前だろ! 姉様が凶賊(ダリジィン)のところにいるんだ! しかも、警察隊が救出に向かっているけど、その警察隊内部に別の凶賊(ダリジィン)と通じている者がいるんだぞ! そんな危険な状況で、異母弟の僕が現場に駆けつけなくてどうする!?」
ルイフォンは半ば呆れ顔で溜め息をついた。
「あぁあ……了解。お前が母親から聞いた話は、だいぶ端折られている。というか、詳しく聞く前に、お前が飛び出していったんじゃないか……?」
「……母は…………」
ハオリュウは言いかけて、隣に座るメイシアを見た。綺麗で優しくて、儚げな異母姉――。
母が正気を失ってしまったなどということは、彼女の耳には入れたくなかった。いずれ知られてしまうとしても、今は、まだ。だから、話は伯父から聞いたのだということを、あえて言う必要もない。
「……そうかもしれない。だから、詳しい情報を頼む」
急におとなしくなったハオリュウに、ルイフォンは不審な目を向けたが、倭国に行っていたエルファンやリュイセンにも説明しておく必要があったので、話を戻すことにした。
作品名:第六章 飛翔の羅針図を 作家名:NaN