オヤジたちの白球 1話~5話
「うふふ・・・
その気もないくせに、口ばかり達者なんだから、このエロじじぃ。
その気があるのなら襲ってみなさいよ。
長年の夢がひょっとしたら、叶うかもしれません」
「えっ。あれから30年も経つのに、俺が惚れていたことをまだ覚えていたか。
薄情な女だとばかり思っていたが、意外だねぇ」
「よく言うよ。薄情なのはあんたじゃないか。
あたしが離婚したとき。あんたはさっさと別の女と所帯を持ったくせに。
あ・・・文句を言える筋合いじゃないか、お互い様だ。
あんたの気持ちはわかっていたさ。
お金に目がくらんで嫁に行ったあたしが悪い。
あら、いやだ。朝っぱらからいったい、なんてことを言わせるのさ。
顔から火が出るじゃないの。
支度はできました。あとは勝手に食べてくださいな。
片付けなくてもいいよ。あとでまた、次の差し入れにやって来るからね。
今度は庭からじゃなく玄関から堂々と入ってきます。
開いているんだろうね、玄関は?」
「あっ、3日前から玄関の鍵は締めたまんまだ。
お前さんが訪ねてくることなど、露ほども考えていなかったからな。
おっ、あっ・・・・おっとと、イテテ・・・」
数歩すすんだところで、祐介が動きを止める。
また腰に激痛がやってきた。力が入らない。そのままバランスが崩れる。
グズグズと祐介の身体が畳へ崩れ落ちていく。
陽子があわてて立ち上がる。
「なんだい。口ほどもないね。
見栄を張って格好ばかりつけているから、そうやっていつも墓穴を掘るんだ。
駄目なら駄目で最初から甘えればいいのに。
いつだってやせ我慢ばかりするんだから、この人は。
そこからU-ターンしなさい。
仕方ありませんね。あたしがおかゆを食べさせてあげますから。うふふ」
(4)へつづく
作品名:オヤジたちの白球 1話~5話 作家名:落合順平