オヤジたちの白球 1話~5話
尻も下がっていない。丸みを帯びたラインが妙に色っぽい。
身体に衰えが見えないのは、こどもを産んでいないから。
サングラスをかけると、いまどき流行りの美魔女のように見える。
「ここまで這ってきて、食べることができるかい?」
台所から土鍋を運んできた陽子が、隣の部屋から声をかける。
「いまさら、食べさせてくれとは言えないだろう。そこまで甘えたら
バチが当たる。
そこに置いてくれ。這って行く。そこで食う」
祐介が腹ばいになる。布団からそろりそろりと抜け出していく。
「急がなくてもいいよ。無理してバランスを崩さないでおくれ。
見た通りの細腕だ。何の手助けも出来ないよ。
寝ていたのなら、電話くらいかけてくればよかったのに。
ご飯くらい、あたしが作ってあげたのにさ」
「ありがたてぇ話だ。こんど何か有ったらかならず電話する。
でもよ。こんな風に世話を焼くのは、お天道様が出ている日中だけに
してくれ。
日が暮れると別のことを頼みたくなる」
作品名:オヤジたちの白球 1話~5話 作家名:落合順平