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オヤジたちの白球 1話~5話

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 『誰だいったい。庭まで入って来るとは、ずいぶん物好きな奴だ』

 ようやくたどり着いた足音が、ガラスの向こうで躊躇っている。
覚悟を決めたのか。そっと伸びた指先が、コンコンと軽くガラスを叩きはじめた。
ガラス戸に手をかけた瞬間。動く気配を感じ取る。
「あら。鍵はかかっていないみたいです。不用心ですねぇ、祐介ったら・・・」
聞き覚えのある声だ。

 からりと音を立て、ガラス戸があく。
『勝手に入るわよ。いるんでしょ。祐介?』
女の気配が廊下へ入って来る。
外気と一緒に、いつもの化粧の匂いが漂ってきた。

 麦わら帽子をかぶった女が、祐介の枕元へ立つ。
起き上がろうとする祐介を、『そのままでいいよ』と制止する。

 「無理して起きなくてもいいよ。
 もう3日も、お店を休んでいるんでしょ。
 どうしたの?。またいつもの、腰痛のはじまり?。
 軟弱だわねぇ。あんたの腰は」

 あらわれたのは、幼なじみの陽子。
成人式が終わった直後。望まれて資産家のもとへ嫁いだ。
「金に目がくらんだんだぜ、あいつは』と、さんざん同級生たちが避難した。
だが何が気にいらなかったのか、わずか3ヶ月で離婚した。
その後。ぷっつりと消息が途絶えた。
まったく連絡がつかず、30年近い月日が経過した。
その陽子が、ひょっこり実家へ舞い戻って来た。いまから半年前のことだ。

 「動けないんだろう。朝ごはんを作って来た。
 病人のくせに無駄な元気を出して、わたしを襲ったりしないでおくれ」

 「朝飯か。そいつはありがてぇ。
 見た通り寝たっきりだ。2日も食っていないから、腹はペコペコだ。
 動けないが、お前がここまで来てサービスしてくれるのなら、話は別だ」


(3)へつづく