オヤジたちの白球 1話~5話
痛みはじめてから3日目の朝。寝床から起き上がることができなくなった。
横になったまま、身動きひとつできない痛みになる。
「また、いつもの状態がはじまりやがった。
分かっているがこうなると、独り者は、どうにもならん」
布団に横になったまま、ひたすら痛みに耐えるしか対策がない。
寝込んだままの2日目の朝。
玄関へ、人がやって来たような気配がする。
祐介は一人っ子。
早くに両親を亡くしている。そのため、親戚との付き合いは薄い。
どちらかといえば疎遠のままだ。
「誰だ。今頃・・・」身体の向きを変えるだけで、痛みが襲ってくる。
玄関の様子を確認することなど、とうていできない。
ピンポン~。玄関のチャイムが鳴る。
「開いてるぞ。勝手に入ってきてくれ」
そう叫んだ。だが声が出ない。かすれきっている。
まる2日間、何も食べていないためだ。体力はすでに底をついている。
(落ち目の三度笠だな、情けねぇ。声もろくに出やしねぇ・・・)
もういちど。ピンポン~と玄関のチャイムが鳴る。
祐介は、声を出すことを諦めた。
それから数分後。今度は庭へ、誰かが入って来たような物音がする。
(へっ・・・回り込んで来たぜ。物好きな奴もいるもんだ・・・)
庭は荒れ放題になっている。
好きではじめた家庭菜園も、手入れを中断したまま、ぼさぼさ状態に
なっている。
庭というより、まるで耕作放棄の農地のようだ。
不安を感じながら、こわごわ荒れ地を歩いてくる様子が、枕元まで
伝わって来る。
作品名:オヤジたちの白球 1話~5話 作家名:落合順平