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オヤジたちの白球 1話~5話

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 奥さんが亡くなって以降。店の中で閑古鳥が鳴きはじめた。
5人が座れるカウンターと、小上がりに6人が掛けられる大き目の
テーブルが2つ。
それでも客の消えた店内は、閑散として広すぎる。
『そろそろ閉め時かな・・・この店も』それがひとり残された祐介の口癖。

 そんな居酒屋が、ある日を境に復活をとげる。
復活の原因は、ふらりと不定期にふらりとあらわれるひとりの美人客。
歳の頃なら40前後。色白。額に前髪が揺れている。

 この美人客が何処へ住み、どんな暮らしをしているのか、誰も知らない。
いつなら出会えるのか。誰も見当がつかない。
ふらりとあらわれるこの美人客と行き逢えるだけで、幸運なのだ。

 噂が噂を呼び、酒と女が大好きな男たちが集まるようになった。
今夜もふらりとあらわれる美人客を目当てに、呑んべぇたちが集まって来る。
「今日あたり(たぶん)あらわれるだろう」と、とぐろを巻く。

 のれんが揺れた。女があらわれた。
(お・・・)軽いどよめきが、呑んべぃどもの間を走り過ぎていく。
いつものように女が、カウンターへ腰をおろす。
1杯目に出てくるのは、東北の純米酒。
薄く切られたカボスが2片。ゆらゆらとコップの中で揺れている。

 「おいしい・・・」