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オヤジたちの白球 1話~5話

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オヤジたちの白球(1) 謎の美人客

 話は、10年前にさかのぼる。
織物の町として知られる群馬県桐生市の北西部に、日暮れとともに
呑んだくれが集まる居酒屋がある。
街の中心部からかなり離れた山の裾。ポツンと一軒だけたつ小さな居酒屋。

 春になり田圃に水が満たされると、カエルがうるさく鳴きはじめる。
真夏になると、ホタルが飛び交う。
近くにあるホタルの里から迷い出たホタルたちだ。
赤い提灯につられて、ここまで飛んでくる。

 桐生市は、関東平野北限の町。
市街地のはずれから、山地がたちあがる。
山容は低いが里山ではない。すすむにつれて標高を増していく。
栃木県、福島県と越え、岩手県を経て、青森まで連なっていく山脈がここからはじまる。


 店主の名前は、片柳 祐介。
いまは独身。ことしで50歳になる。
居酒屋をはじめて、今年で5年目。
美人で愛想のよかった奥さんは3年前、ふいの病気でこの世をさった。