オヤジたちの白球 1話~5話
陽子はきっと拒絶する。
絶対に断って来るだろうと、祐介は最初からあきらめていた。
だが意外な答えが返って来た。
「膝枕ねぇ・・・悪くないわね。いいわ、膝枕くらいなら。
お安い御用です」
陽子がそろりと腰をおろす。
祐介の顔の下へ、ゆっくり足を滑り込ませる。
「ほら。顔を乗せて。ゆっくり動いてよ。
あわてて動くと腰に痛みが走って、また、ひどいことになるからね」
「最高だな、おまえの膝は。
お礼に君へ最大限の感謝をこめてキスなんか、贈りたいな」
「いらないわ。半病人のキスなんか。
でも保留にしておくわ。
あんたが回復して、もっと元気になったとき、もらうかもしれません。
うふっ」
「えっ!・・・」
「真顔にならないで。冗談に決まっているでしょ。
敵に塩を食わせにやって来た女の言うことを、いちいち真に受けないで。
熱いからね。やけどしないで頂戴」
陽子の膝は心地がいい。
すらりと伸びた指が、食べごろのおかゆを祐介の口元へ運んでくる。
悪女のわりに、陽子の料理は旨い。
作品名:オヤジたちの白球 1話~5話 作家名:落合順平