③全能神ゼウスの神
すると、実家から少し離れたところに白いセダンが停まっていた。
男性の刑事さんが運転席に、女性の刑事さんが後部座席に乗り込む。
必然的に私は助手席となり、緊張しながら乗り込んだ。
すると男性の刑事さんが、すぐにスマホの画面を見せてくる。
「これ、桜井さんですよね。」
そこには、まるで犯人の目線であるかのように、私が襲われている姿が鮮明に大きく映し出されていた。
驚いて言葉を失う私に、刑事さんがスマホの画面を消しながら信じられない言葉を告げる。
「これは、血の池にたどり着いた犯人の記憶だよ。」
(…えっ!?)
「探したよ~、フェアリーちゃん♪」
聞き覚えのある声と口調に、私が男性の刑事さんを見ると、みるみる間に長髪の金髪赤瞳に変わった。
「…サタン様…。」
呆然とする私に、サタン様が楽しそうに笑う。
「良かった!記憶ちゃんと残ってたんだ♪」
そしてニコニコ無邪気な笑顔のまま、もう一度、スマホの画面を私に見せた。
「も~、大変なんだよ、今!助けてよ、フェアリーちゃん!」
そこに映し出されたのは、プロビデンスの間らしき部屋の様子。
輝くリングに白い大きな羽根を持つ人物と、生身の人間のような姿の人物ふたりが映し出される。
でも、その生身の人間のような人物は、ゼウス様ではなかった。
「…陽?」
「そう。今、ゼウスの地位にいるのは、陽だよ。」
「…じ…じゃあ…このミカエル様が…。」
小刻みに震える私を、サタン様は軽く一瞥して首をふる。
「ん?ああ、これはミカエルじゃねーよ。普通の天使。ミカエルはサタンと1セットだから。前も教えた通り、同時に真逆の性質の強大なオーラを持つ魂が現れない限り、ミカエルとサタンは代替りしない。だから、今は陽がゼウスとミカエルを兼任してる。ただやっぱ大変だから、優秀な天使を補助で使ってるだけ。こんなこと、特例なんだけどね~。」
(じゃあ、じゃあ…)
「ゼウス…リ…リカ様は!?」
思わずサタン様に詰め寄ると、サタン様は一瞬驚いた表情を見せた後、悪戯な笑顔を浮かべた。
「あ~、あの人の真名、リカってんだ?くくっ。それがわかったから、探せるな。」
「…探せる?」
「そ。探さなきゃいけねーの。行方不明だから。」
(!?)