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赤襟の清ちゃんと、三毛猫のたま 71話~最終話

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 (この悪天候は、ガスがおさまってもそれで終わりにはならない。
 最悪の事態を考え、早めに、ビバーク地を考える必要があるな・・・)

 必死に歩くたまの背中を追いながら、恭子がポツリとつぶやく。
事態はそれほど切迫している。
しかし。このあたりにビバークに適したポイントは無い。
2人を取り巻く一帯は、谷に向かって滑り落ちる危険のある草の斜面。
ところどころにハイマツの群生があるだけだ。

 (最悪の時はハイマツの根を利用して、ツェルトを張ろう)

 濃密に立ち込めたガスの上に、雷雲がやって来た。
時間とともに暗さが増していく。気温も下がって来た。

(雷雲の接近だけじゃない。間違いなく、続いて荒れた気象がやって来る)

 恭子はすでに最悪の事態を想定している。ビバークの覚悟を決めている。
ビバークするなら、早めに準備した方がいい。
問題はそのことをいつ、たまの行動を見守っている清子に伝えるかだ。
まったく視界を奪われたなか。
確信もなくやむくもに動き回っては、無駄に体力を消耗するだけだ。

 たまがまた、立ち止まった。
風が方向を変えるたび、匂いの源を失ってたまが立ち止まる。
そろそろ限界なのだろうか。清子を見上げたたまの目に元気がない。
『もういい、たま。そんなに無理しなくても』清子がたまを抱き上げる。

 (たまも限界のようですね。となるとこれ以上、歩き回るのは得策じゃない。
 覚悟を決め、ハイマツの茂みでツェルトを張るか)