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赤襟の清ちゃんと、三毛猫のたま 71話~最終話

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 清子に露営すると伝えようとしたとき、はるか先で何かが動く気配がした。
その瞬間。ぐったりと目を閉じていたたまが、いきなり元気を取り戻す。
『おいらの大好物のカツオ節の匂いだ!。今度こそ、間違いねぇぞ・・・
ありがたいことにカツオ節がむこうから、おいらに逢いにやって来た!』

 元気を取り戻したたまが、清子の腕から飛び降りる。
そのまま勢いよく、濃霧の中を駆け出していく。
清子にも恭子にも、いったい何が起こったのかわからない。
止める間もなくたまの小さな体が、ガスの向こうへあっという間に消えていく。

 いっぽう。
ひげの管理人が濃密な霧の向こうに、何やら動く動物の気配を感じとる。
その物体が、こちらにむかって全速力で駆けてくる。
『なんだぁ、いったいぜんたい何事だ?』ひげの支配人が、自分の足もとへ
目を凝らす。
うごめく気配はまちがいなく、ひげの支配人めがけて、まっしぐらに
駆けてくる。

 『なんだ・・・この妙な気配は。
 ヒメサユリの群生地に、顔見知りの動物なんかいないぞ・・・』

 その瞬間。あしもとに、三毛猫のたまがあらわれた。
怒涛のようにあらわれたたまが、後ろ脚をぐっと地面に踏ん張る。
つぎの瞬間。管理人の右手の袖に向かってジャンプする。

 ひげの管理人の袖にぶら下がったたまが、満足そうに目を細める。
『おいらの大好物のカツオ節だ。それにしても、匂いは有るが味がねぇぞ。
どうなってんだ。これじゃまるで詐欺じゃねぇか・・・』
管理人の袖にぶらさがったたまが、チエッと不満そうに口を歪める。

 「こいつは驚いた。
 おまえさんはゆうべの、三毛猫のオスじゃないか。
 おまえさんが此処に居るということは、お姉ちゃんたちも
 近くにいるはずだな。
 お~い、諸君。集まってくれ。吉報だ。
 有力な手掛かりが、向こうから俺のところへやって来た。
 いてて|。こら子猫。
 嬉しいからとはいえ、俺の手を本気でガリガリ噛むんじゃねぇ!」


(74)へつづく