小説が読める!投稿できる!小説家(novelist)の小説投稿コミュニティ!

二次創作小説 https://2.novelist.jp/ | 官能小説 https://r18.novelist.jp/
オンライン小説投稿サイト「novelist.jp(ノベリスト・ジェイピー)」

赤襟の清ちゃんと、三毛猫のたま 71話~最終話

INDEX|7ページ/21ページ|

次のページ前のページ
 


 ひげの管理人が、清子からもらったカツオ節と削り器を取り出す。
カツオ節は、カチンカチンの本枯れ節。おまけに削り器は、つかいはじめたばかりの新品。
それを見た作業員の2人が、目を丸くする。

 「どうしたんだ。そんなもの!。それで味噌汁の出しをとるのか。
 たまげたなぁ。山小舎にあるまじき一品じゃねぇか」

 「これか。これは、さっき下っていたおねぇちゃんからもらったもんだ。
 世話になった礼にと気持ちよく置いて行った。
 そういえばあの2人。
 ホントに無事に、下まで降りて行ったんだろうか・・・」

 「やっぱり気になっているのか、管理人さんも。
 おねえちゃんたちというのは、ヒメサユリを見に行ったあの2人のことだろう。
 実はおれたちも、あの2人のことが気になっている。
 このガスは、かたらいの丘のあたりから発生したものだ。
 ということは、あそこへ向かったおねえちゃんたちが、いちばん先に
 身動きがとれなくなっているはずだ」

 「俺もその点が気にかかっている。
 嵐が来るまでは、もう少しだけ時間の猶予がある。
 あの2人の安否が、どうも気にかかる。行くか・・・探しに」

 「しかし。このガスだ。
 ヒメサユリの群生地に居るとしても、うまく見つけることができるかな?」

 「それでも俺はあの2人が、かたらいの丘でビバーク※しているような
 気がしてならねぇ」

 ひげの管理人がカツオ節を握り締めて、ポツリとつぶやく。
 
 ※ビバーク 緊急事態の野宿のこと。日本語では不時露営。
      時間がかかり日が暮れてしまった場合や、急な体調不良や
      天候が急変した場合などのさまざまな場合が有る。
      いずれも山岳遭難の一歩手前の状況といえる。

(73)へつづく