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赤襟の清ちゃんと、三毛猫のたま 71話~最終話

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 たまが匂いに向かって必死に足を運ぶ。
しかし。風がまた方向を変えた。カツオ節の匂いが真逆の方向へ去っていく。
突如として方向を変える風が、たまの嗅覚を翻弄する。
そのたびにたまが立ち止まる。
立ち止まったたまが、かすかな匂いを嗅ぎだそうと、小さな鼻を
湿った空へ突き出す。


 「匂いを確認しているみたいです、たまは。
 それにしてもこの風の中で、たまはいったい何を感じ取ったのでしょう?」

 「たまはとくべつスケベな生き物だ。
 とくに女の匂いには、とくべつ敏感な反応を見せる。
 でも、まもなく嵐がやって来る山を歩く、物好きな女はいないはず。
 となると対象は女ではなく、食欲かな。
 大好物を発見した時のような嬉しさが、たまの背中にあらわれているもの」

 たまがまた、カツオ節の匂いを嗅ぎ分ける。
『おっ、また漂ってきたぞ。こっちの方向からだ。
しかも、だんだんおいらに近づいてきている。まさにラッキーといえる展開だ』
元気を得たたまが、ふたたびカツオ節をめざして歩きはじめる。


 話が少しさかのぼる。
場所は、ひげの管理人のいる三国の避難小屋。
山小舎が、天候の急変を察知した避難客たちで、すでに10名をこえた。
切り立った谷から吹き上げてきたガスは、山小屋の姿も隠し始めた。