赤襟の清ちゃんと、三毛猫のたま 71話~最終話
『はい』と小春が振り返る。
まる2日間。ヒメサユリは嵐の中を翻弄された。
しかし今朝は何事もなかったかのように、シャンと立ち直っている。
満開の草原が、4人の前にひろがっている。
ピンク色のヒメサユリに混じり、あざやかなオレンジ色のニッコウキスゲも
負けじと朝の風に揺れている。
蝶と戯れているたまを、恭子がひょいと抱き上げる。
『世話になったわねぇ。お前には。
お礼に、お前が大好きな乙女の匂いをたっぷり嗅がせてあげましょう。
ほら。成熟した乙女の豊満なおっぱいだ。
なんだ。そのつまらなそうな顔は。
清子のペチャパイより、あたしの胸の方がほうがよほどもいいだろう?。
ふん。つまらない子だねぇ、お前って子も。
貧乳の清子の方がいいのか、やっぱりお前は・・・』
『うん』たまが嬉しそうに、目を細める。
『そうか。やっぱり清子が好きか。仕方ないわよねぇ。
あたしも清子は大好きさ。可愛いし、お茶目だし、素直だもの。
でもさぁ・・・・まもなく会津を離れて、次のお姉さんのところへ修行に
行っちゃうのが少し気に入らないのよ。
盆踊りまでいると、あれほどわたしと約束したくせに、さ』
たまを抱きかかえた恭子が、景色に見とれている清子の背中へ寄っていく。
『たまはあんたが好きだってさ。あんたのぺちゃんこの胸が
たまには最高なんだ』
返すわ、こんな愛想の無いやつ、と恭子がたまを手渡す。
「清子。盆踊りの約束は帳消しでいいよ。
あの2人は放っておいても、何とかなるような雰囲気になっているもの。
わたし。高校を卒業したら東京へ行く。
4年間、大学で学んでくるけど、それが終ったら喜多方へ戻って来る。
あんたも4年間、せいっぱい、芸者の修行に励んでね」
作品名:赤襟の清ちゃんと、三毛猫のたま 71話~最終話 作家名:落合順平