赤襟の清ちゃんと、三毛猫のたま 71話~最終話
赤襟の清ちゃんと、三毛猫のたま (75)
レディファースト
ひげの管理人が、グビリと缶ビールを呑み干す。
2人の無事の生還を見届けた山小屋は、普段の静かさを取り戻す。
宴といっても、車座に集まって酒を飲むわけではない。
思い思いの場所へ陣取り、静かに酒を飲むだけだ。
山小屋だからといって特別なルールはない。
しいてあげれば譲り合いの精神と、必要以上に騒がないことがあげられる。
登山に疲労はつきもの。
疲れる過ぎると心の余裕もなくなり、つい自己中心的になりがちだ。
しかし山小屋はおおくのひとが利用する場所なので、周囲に気を配ることも
大切になる。
人の休養をさまたげないよう、たとえ食堂であっても大声はつつしみ、
寝床でのおしゃべりは禁物となる。
限られたスペースを大勢で利用するため、食堂に長居しないなど
席を譲りあうこころがけも大切だ。
三々五々と散ったため、食堂に残ったのはひげの管理人とたまだけになった。
「騎士は12世紀頃のヨーロッパに、独立した階級として定着する。
これがやがて世襲化する。
しかし次男や三男が、家督を継げる可能性はゼロだ」
『なんだよ。それじゃ封建時代の武士階級と、まったく同じじゃねぇか。
苦労したんだな、騎士の家に生まれた次男や、三男は・・・』
「所領をもたない騎士たちが、やがて主君に仕えるようになる。
戦功をあげて、自分の城を手に入れようと考えたからだ。
裕福な未亡人がいれば近づき、後釜に座ることもあった。
若い騎士が主君の妻に、恋愛感情をいだくこともあった。
主君もまた有能な騎士を引き止めるため、それをうまく利用したという」
『女の髪の毛は、象もつなぎとめると言うからな』
作品名:赤襟の清ちゃんと、三毛猫のたま 71話~最終話 作家名:落合順平