赤襟の清ちゃんと、三毛猫のたま 71話~最終話
ただし。毎日入れるわけではない。
貴重な水と燃料を守るため、従業員の入浴も数日おきと決められている。
「君たちは、特別待遇だ」。ヒゲの管理人が目を細める。
お湯を沸かしてくれと指示された避難客たちが、水場からバケツリレーで
大量の水に運びあげた。
風呂を沸かしながら、ひたすら2人の無事の帰還を待ち受けていた。
「遠慮することはない。2人して充分にあったまってくるといい」
全員に見送られ清子と恭子が、従業員用の風呂へ消えていく。
ノコノコと2人の後を付いていくたまを、ヒゲの管理人が『ちょっと待て』
と怖い顔で呼び止める。
「こらこら。お前さんは遠慮しろ、ウチの風呂は男子禁制だ。
あきらめて俺たちの宴に混ざれ」
宴に混ざれといわれても、たまは酒を飲まない。
『安心しろ。猫に酒を飲ませて”猫じゃ”を躍らせるつもりなど毛頭ない。
なにしろおまえは、2人の麗しい姫を助けたナイト(騎士)だからな。
酒よりも、いいものがある。お前の大好きな”猫飯(ねこまんま)”だ」
たまの目の前に、たっぷりカツオ節が乗った冷めた白米が出てきた。
ちなみに関東風のねこまんまは、ご飯の上にカツオ節を乗せる。
関西ではご飯に味噌汁をかけたものを、猫まんまとよぶ。
「騎士(ナイト)たるもの。おなごの尻を追い回して何とする。
デンと構え、風呂から出てくるのを待つのが、騎士のたしなみというものだ。
そいつをたらふく食っているうち、2人が風呂から出てくるだろう」
『なんだぁ・・・騎士のたしなみというのは?』
作品名:赤襟の清ちゃんと、三毛猫のたま 71話~最終話 作家名:落合順平