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短編集17(過去作品)

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 風が少し吹いただけでも水面に細かな波紋が広がり、それが感じないくらいの強さしかない風を感じさせてくれる。話をしながらお互いに水面を見ていたことを思い出した。
 まいの過去は、本当に聞いてはいけないようなものだった。男から何度も裏切られ、傷つけられ、どうしようもなくなって飛び込んだ風俗という池、そこは、そんなまいをやんわりと受け止めてくれたらしい。しかし、心地よさも分からずに飛び出そうとした水の中、雁字搦めを感じながら、ちょっとした力でもそれが波紋となってまいを襲う。
 仕事をやめた時がそうだったらしい。
 強い力を感じ、
「今度こそ」
 という思いをそのまま信じ、飛び出した池の中の世界……。しかしそこで待っていたものは、あまりにも軽い表の世界だったのだ。力加減が分かるはずもなく、ちょっと動いただけでまわりに大きな影響を与えるものだった。
 まいは、またしても池を探したのだ。自分を受け入れてくれる大きな池、それを探し求めていたのだ。
 大きな石を水の中に落とし込むと、表面は激しい反発に遭うが、沈んでいくにしたがって、水が抵抗を防いでくれる。そして底についた時には、下に沈んでいる砂が着地体勢に入った自分を綺麗に包んでくれるのだ。
「砂の波紋、砂紋……」
 まいが口にする言葉だった。最初に私に感じたのがその砂紋だった。そして私は落ちてくる石、まいを待ち構えていた。それが自然であればそれに越したことはない。
 きっとうまくいくだろう。
 まいの身体の中には大きな石を受け入れる羊水が、私との思いを込めて新しい命を育んでいた……。


                (  完  )









作品名:短編集17(過去作品) 作家名:森本晃次