ハルコ ~1/2の恋~
心なしか、瞳も潤んでいたように見えたのは切れかかって点滅を繰り返している蛍光灯のせいだったのか……。
「いいってことよ、幼馴染じゃねぇか……それより身体に気をつけてな」
「東京に行ったらすぐ入院だけどね」
「性転換手術ってそんなにおおごとなのか?」
「うん、退院するまでかれこれ三週間位かかるみたい」
「そんなに?」
「チョンと切ってハイオシマイとは行かないわよ」
「それだけの覚悟を持って手術に臨むわけか……結構大変なんだな」
「間違って男の子に生まれて来ちゃったばっかりにね……でも、新しい人生を始めるんだと思えばお安いものだと思うわ」
「あのさ……包むもの何にも持ってないけど、これ、餞別」
「え~? いいのに」
「取っといてくれよ、友達の旅立ちなんだからこれくらいさせてくれよ」
「……そう?……本当言うと入院費用は別にしても当座のお金はちょっと厳しかったんだ、ありがたく頂戴します」
「うん……じゃあな、元気でな」
「ケイタさんも……」
ケイタが見えなくなるまで見送ったハルコは、後ろ手にドアを閉めるとそれに寄りかかった。
「……友達……か……」
中学卒業から八年が経っている、ケイタと会うのはそれ以来だった。
子供の頃、守ってくれるケイタは頼もしく好ましい存在だったし、中学の柔道部で汗を流ずケイタは輝いて見えたが、恋心を抱いていたわけではなかった……。
「あの頃……まだあたしの中で女の心がまだあんまり育っていなかっただけなのかな……」
ハルコの瞳が潤んで見えたのは、切れかかった蛍光灯のせいではなかった……。
作品名:ハルコ ~1/2の恋~ 作家名:ST