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カクテルの紡ぐ恋歌(うた)Ⅹ

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「これ、ナンプラーだよ。タイ料理には必須の調味料。魚醤みたいなもん」
 宮崎が銀縁眼鏡の下で鼻を動かした。
「片桐1尉のカノジョって、タイ人?」
「違いますよ。ただ、タイ料理にハマってるだけです。クリスマスの時もタイ飯食いに行きましたから」
「そりゃ相当気合い入ってるね」
 宮崎は、湯気とともに立ち上る生臭い香りに構わず、大ぶりのエビが見え隠れする麺の山に箸を伸ばし、大きくひとすくいした。
「うん。美味い。本格的な甘辛酸っぱさでいいね」
「甘辛酸っぱい……って、どんな味なんですか?」
「鈴置さん、タイ料理食べたことない? 百聞は一口にしかず。お試しあれ」
 宮崎に促され、美紗も片桐の持参したものに手を出した。初めて口にしたエスニック料理は、鋭くも深い味わいだった。唐辛子の味が強いのに、なぜかコクを感じさせる。鼻にツンとくるハーブの香りは癖が強く、いかにもエキゾチックだ。
「とても刺激的ですけど、美味しいですね」
「でしょお!」
 片桐が目を細めて嬉しそうに笑う。それを、小坂と佐伯が揃って怪訝そうに見た。
「まあ、女の人は結構タイ飯好きだって聞くけど……。宮崎さんがこのニオイに抵抗ないのは、やっぱりそのケがあるから?」
「さあ、どうかしらねえ?」
 宮崎は、奇妙な目つきで小坂を見やりつつ、再びナンプラーの香る米粉の麺を紙皿に取った。
「確かに、男でタイ料理が好きってのは、あまり聞かない感じするね。片桐1尉は、ナンプラーとかパクチーとか平気なんだ?」
「はあ、もう慣れました」
 苦笑いを浮かべる片桐に、小坂はますます顔色を変えた。
「大丈夫なんか? 結婚したら、二日に一回はこういう類の晩飯になるんじゃね? 『味覚の不一致』って結構キツそ……」
「前もって分かっていれば、問題ないでしょう。……きっと」
 佐伯が頼りないフォローを入れる。