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カクテルの紡ぐ恋歌(うた)Ⅹ

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「特にこの夏は、某大国の案件で大変な目に遭いましたが、一人一人の頑張りと最高のチームワークで、無事に修羅場を乗り越え、班長の松永2佐も私も、大変誇りに思い、深く感謝するところです。それから今年は、我らが片桐1尉のCS(空の指揮幕僚課程)合格というめでたい出来事もありました。彼の快挙と、我々の絆に乾杯!」
「乾杯!」
 五人が唱和すると、「直轄ジマ」からほど近い総務課からも祝いの言葉が飛んできた。すでに結構アルコールが入っているらしい大声に、片桐は心底嬉しそうに何度も頭を下げた。そして、コップの中身を一気に空にすると、
「差し入れがあるんすけど」
 と言って、机の下から弁当包みのようなものを出した。派手な花柄の包みの中には、大きめのタッパーが入っていた。
「何それ」
「カノジョに持たされたんす。今日納会があるって言ったら、CS受験でいろいろお世話になった皆さんに食べてもらってくれって……」
「ずいぶん気配りのカノジョさんだねえ」
 佐伯と宮崎が感嘆しきりという顔で頷き合う傍で、小坂は好奇心旺盛な子供のように目を輝かせた。
「片桐のカノジョの手作り料理? オレもゴチになっていいの?」
「ぜひ食ってやってください。あ、ちょっと温めてきますんで」
 片桐はタッパーを手に、総務課の近くに置いてある電子レンジの所へ行った。しばらくすると、総務課が何やら騒ぎ出した。しかし、片桐はまるで相手にせず、熱くなったタッパーを持って戻ってきた。
「カノジョの手料理っつったら、どこ行っても冷やかされるよなあ」
「いえいえいえ、さ、どうぞ」
「では、ありがたく!」
 「直轄ジマ」の真ん中に置かれたタッパーの蓋が開けられると、紙皿と割り箸を持った小坂が、それに飛びつかんばかりに身体を伸ばした。そして、数秒間その姿勢で停止した後、滑稽な渋面をゆっくりと片桐に向けた。
「何、このニオイ……。これ食いもん?」
「焼きそばっすよ、タイ風の。ヒトのカノジョの得意料理に文句つけないでもらえます?」
「得意料理? マジですごいニオイなんだけど!」