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カクテルの紡ぐ恋歌(うた)Ⅹ

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「ああ、夏までにはご結婚だったか。タイ料理のカノジョさんと」
「式は七月の頭なんすけど、ゴールデンウィークから同居の予定で」
「もしかして、マリッジブルーですか? 食の不一致で」
 上半身をひょろりと伸ばした佐伯に、片桐は口を動かしながら正直に頷いた。
「なんですか? タイ料理の彼女って」
 大須賀が異様にまつげの長い目を見開く。小坂が年末の納会での出来事を面白おかしく解説すると、恋愛話の好きそうなアラサー女は遠慮なく大笑いした。ふくよかな体が揺れるたびに、ニットのセーターが描く巨大な丸いラインもゆさゆさと上下に揺れる。
「全く、嫌味に贅沢な悩みだよな。生臭い飯でも作ってくれる人がいるだけ有難いと思えよ」
「あらあ。アタシ、片桐1尉の気持ち、ちょっと分かるわあ。ご飯は大事だもん」
 いかにも食欲旺盛に見える大須賀は、大口を開けてトマトのブルスケッタを食べると、片桐ににまりと笑いかけた。
「カノジョさん、お仕事してるのお?」
「派遣の仕事やってんすけど、今の契約が切れたら辞めるって言ってまして」
「そっかあ、それじゃますますご飯の主導権はカノジョさんに握られちゃうね。早いトコ自分の食の好み言ったほうがいいよ。あとさ、休みの日に片桐1尉が自分の食べたいもの作って奥さんにごちそうするってのも、アリじゃない?」
 年上女性の助言に、結婚を控えた男は何度も首を縦に振った。
「なるほど。家事を手伝うオトコを演じて自分の好きなものを作るか……。料理なんてほとんどやったことないっすけど、検討の余地大っすね。僕の彼女、一度ハマると長いから、黙ってたらあと五年はタイ料理食わされそうだし」
「移り気なヒトよりずっといいんじゃない?」
「そうなんすかねえ」
「だあって、一度好きになったら末永~く愛しちゃうタイプってことでしょ? 片桐家はきっと、何年たってもずうっと新婚いちゃラブ状態だわね」
 大須賀がピンクに艶めく唇を横に広げると、若々しさを残す1等空尉は途端に耳まで赤面した。周囲の面々が派手に冷やかす。