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カクテルの紡ぐ恋歌(うた)Ⅹ

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「そういえばこの間、5部長が話していたんだが」
 にわかに仕事の話を始めた日垣は、まつげに涙を残す美紗をベッドに座らせ、己もその隣に腰を下ろした。
「今年の夏か秋あたりに、5部の専門官ポストがひとつ空く見込みらしい。年度が変わったら後任探しを始めるそうだが、現地経験の有無といった経歴より情報センスのある人間を欲しいと言っていた。君なら5部の仕事も広く浅く知っているし、情報運用の話も感覚的に分かるだろうから、向いているんじゃないかな」
「私が、専門官に、ですか?」
「最初は新規採用者と同じ『専門職員』の肩書だが、五、六年後には正式に専門官になる前提で育ててもらえるはずだ。直轄チームを二年ほどで出ることになってしまうが、悪い話ではないと思う。望むなら、私が今の職にいるうちに話を進めておくよ。年度明けからダブル配置にして引き継ぎ期間を長く確保すれば、少しは楽にスタートできるかもしれない」
 突然のオファーを、美紗は当惑しながら聞いた。遠慮がちに、心に浮かんだことを尋ねた。
「あの、日垣さんの新しいお仕事の、防衛省側のカウンターパートはどこになるんですか?」
「私のカウンターパート? 内閣官房と直接関わるのは主に防政局(防衛省防衛政策局)になるが、統合情報局も無関係ではないよ。国際情勢関連の情報要求は内閣官房からも頻繁に出されるからね。そういった情報要求は、一次的には防政局の調査課あたりが受けるが、そこから情報局に話が入って、各担当部に作業が割り振られる。そういう意味では、情報局側の調整窓口になっている直轄チームにも、引き続きいろいろと世話になりそうだ」
「そうですか……」
 昼休みに会った吉谷綾子の顔が、思い浮かび、消える。美紗は、泣き出しそうな微笑みを浮かべ、日垣をまっすぐに見つめた。
「それなら、私はずっと今の配置のままでいたいです。専門官のお話は、もっと経験を積んだ後で」
「美紗」
 切れ長の目に、ふいに厳しい色が浮かんだ。
「気持ちは嬉しいが、自分のキャリアをそんなふうに決めてはいけない。専門官ポストは実際かなりの狭き門だ。専門職の新規採用は毎年高倍率だし、部内の希望者も多い。そもそも、一つのポストでじっくり専門性を高める職種だから、人の異動がめったにないんだ。今回の話を逃したら、次の機会はなかなか来ない」
「でも」