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【終】残念王子と闇のマル

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理巧はそんな麻流を抱き留め、白雪姫の腕を強く掴んだ。

「貴様…。」

その瞬間、銀のマスクが外れ、理巧は至近距離で白雪姫と視線を交わす。

「!」

間近で理巧と視線が合い、声を聞いた白雪姫は、色術にかかった。

頬を紅潮させうっとりと腰が抜けた白雪姫を、理巧は乱暴にふり払う。

そこへ素早く駆けつけた忍たちが、白雪姫を拘束し連れて行った。

カレンは、理巧から麻流を抱き取る。

「…マ…ル?」

何が起きたかわからないカレンは、混乱しながら腕の中の麻流を見下ろした。

「…ぅっ…ぐ…ふっ…」

小さく呻いた瞬間、短刀が刺さったままの麻流の体がひきつり、赤い血を吐く。

「マル!?」

カレンが叫ぶのと同時に、人混みを掻き分けて空と聖華が駆けつけた。

紗那と馨瑠がすぐに傍らに膝をつき、気道を確保する。

「すぐに手術室へ!」

空の指示と同時に忍が数人降り立ち、カレンの腕から麻流を抱き取るとそのまま紗那たちも連れ、姿を消した。

理巧も、麻流が吐いた血に染まり呆然とするカレンを担ぐと、瞬時に姿を消す。

ホールの中央に広がる血だまりを、皆が取り囲むように佇んだ。

突然の出来事に、誰も言葉が出ない。

聖華は血だまりの傍に膝をつくと、顔を両手で覆った。

そんな聖華の隣で空は立ち上がると、やはり呆然としている楓月の背中を押す。

「解散させな。」

空の声で我に返った楓月は、マントを翻し威厳を保つと、賓客を見渡し声を張り上げた。

「お騒がせし、申し訳ない。今夜はこれにて、お開きとさせて頂く。」

賓客達は青い顔で無言のまま、速やかにホールから出て行く。

そんな賓客に混じって逃げるように出て行こうとした雪の国の王を、太陽が拘束した。

「わ…わしは何も知らぬ!娘が勝手にやったことだ!」

暴れる国王に空は近づくと、その後ろ髪を乱暴に掴み、睨む。

「後でゆっくり、聞かせてもらおうか。」

心臓が止まるほど恐ろしい殺気を放つ空の凄みに、国王は気を失った。

「地下牢に入れときな。」

空の指示で、忍達が国王を担ぐ。

空は、呆然と座り込んだままの聖華をふり返った。

小さく息を吐くと傍へ寄り、その肩を優しく撫でながらゆっくりと立ち上がらせた。

「片付けといて。」

空は血だまりを顎でしゃくり、忍達に指示を与える。

「あのお姫サマは、俺が行くまで自害させんなよ。」

「は。」

頭を下げる忍たちからも動揺を感じた空は、落ち着かせようとやわらかく微笑んだ。

「麻流は…心配いらねーから。」

いつも通りの空に、忍達の表情が少し和らぐ。

空はそんな忍達に笑みを見せながら、聖華と楓月の肩を抱いて、ホールを出て行く。

太陽と銀河は幼い王子二人を、現場を見せないように別の出口から連れ出した。

「マジかよ…。」

ホールの扉が閉まった瞬間、空は頬を歪めながらポツリと呟く。

「なんでこうなんだよ…。」

やっと幸せを掴んだはずの娘の不幸に、空は唇を噛みしめた。