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郷田三郎(G3)
郷田三郎(G3)
novelistID. 29622
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氷柱(つらら)

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屋根に降り積もった雪は、陽の光や屋内の暖房に解かされて雫となる。
 しかし、それは地上に滴り落ちる前に再び凍りつき透明なつららとなって私の窓の軒先で行き場も無く固まってしまうのだ――。
 だが、寒さの厳しい頃には毎日どんよりとした曇り空が続き、雪を解かす程の光は地上にまで降りて来ないのであった。

 私は深夜に帰宅すると殆ど屋外と変わらない気温の部屋に灯りを点け、石油ファンヒーターを回した。
 ヒーターはほんの少しだけ石油くささを吐き出した後、きれいに燃え始めて私にマフラーを取って呼吸しても良い事を教えてくれる。
 木造二階建てのアパート。その二階の端の部屋に越して来て二年になる。
 仕事でミスを犯して地方の支店に左遷された私を、妻も二人の子供達も訪ねてきたことは無かった。
 冷蔵庫から紙パックの酒を出し大き目の湯飲みに注ぐ。
 それを駅前のコンビニで買ってきた弁当と一緒に電子レンジに放り込んだ。
 胸ポケットからタバコを取り出して火を点ける。
 結婚して子供が出来た時にやめたはずだったが、一人で暮らすようになって直ぐに又吸い始めた。
 禁煙は十六年間続いた事になる。
 駅前のコンビニでは弁当を買う度に温めるかと訊いてくる。
 週に二三回は利用しており一度も温めた事など無いのを知っているだろうに、店員はマニュアルでもあるのか、毎度同じ事を私に聞いてくる。
 チェーン店のコンビニでは全国どこででも同じサービスを受けられるのかも知れないが、私個人にサービスをしようなどと考える者など一人も居ないのだ。
 レンジを待つあいだに私は四畳半に敷きっ放しにしてある布団の電気毛布のスウィッチを入れ、コートと上着、それに靴下を脱いで、厚手のカーディガンを羽織った。
作品名:氷柱(つらら) 作家名:郷田三郎(G3)