永遠を繋ぐ
藤崎は、昨日の自分、明日の自分と、何らかの関わりを持っているような気がした。それ以前やそれ以降の自分とは関わりがないのにである。
藤崎は、昨日の自分を思い返してみた。
――一体、何を考えていたのだろう?
その時、同じ日を繰り返す前兆のようなものを感じた。そして、そのことを知っている人が少なくとも二人はいるような気がした。
一人はママである。そして、もう一人は日向だった。
二人とも、藤崎を見る目は、目の前にいても、かなり遠くを見つめる目をしていたのだ。別人であるにも関わらず、その表情はまったく同じに見えた。
「考えていることがまったく同じだったら、どんなに顔が違っていても、同じ顔に見える時があるのかも知れないな」
藤崎は、そんなことを考えていたことがあった。
それが自分自身にも言えることだということを、今回初めて知った。もう一人の自分の存在は、以前から考えていたことだったが、
「いるとしても、まったく違う世界にいるんだろうな」
と、その時感じたのは次元の違いだった。
どんでん返しのように、絶対にお互いにその潜在を意識はできても、見ることのできないものだとして、藤崎は信じていた。
そしてリピートを繰り返す自分、さらには、昨日や明日の自分と、どこかで接しているように思えてならない。そうでなければ、藤崎以外の人にも、もう一人の自分の存在を意識させ、話題にするくらいであってもいいと思ったからだ。話題にできないのは、それぞれの中での伝説のようなもので、暗黙の了解がすべてを示しているからなのではないだろうか。
藤崎は、同じ日を繰り返していると感じた時から、日向と会うことが多くなった。逆に言えば、日向と会うことが多くなってから、同じ日を繰り返していることに気づいたともいえるのだ。
きっかけがどっちだったのか分からない。
藤崎は今、どこかの世界に飛ぼうとしている。それは開けてはいけない「パンドラの匣」である「玉手箱」を開けてしまった瞬間だった。その時藤崎が感じたのは、
「もう一度目を開けて、その時またリピートだったら、たまらない」
ということだった……。
( 完 )
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