赤襟の清ちゃんと、三毛猫のたま 66~70
急ぐわけにはいかない。
うっかり足を滑らせれば、その瞬間、雪が削った深い谷底へ転落していく。
5分ほど移動したとき。霧の中から、突然、ハイマツの黒い茂みが現れた。
『ダメだ、こりゃ・・・・ここは行き止まりだ!』
恭子があわてて立ち止まる。
たまが間違えたわけではない。
吹き飛ばされたピーナツが、ハイマツの根元まで転がってしまったからだ。
日本海側から尾根に向かって、低気圧の強い風が吹き付けてくる。
風をまともに受ける西の斜面は、ハイマツが群生している。
一部が尾根の細い路を越えて、草原にかわっていく東側の斜面に茂みを作る。
すすむ道を塞がれたのも、そうしたハイマツの群生のひとつだ。
ヒュウ・・・・また、風がうなりはじめた。
突風がまともに2人へ吹き付けてくる。
『おいでなすった!』恭子が両足で、必死に踏ん張る。
強風が吹くということは、ここがまもなく尾根の稜線ということになる。
『方向は間違っていない。問題は、避難小屋が右か左か。どっちに有るかだ』
尾根の登山道までは、なんとかたどり着けた。
『お願いだ、たま。ここからが正念場です。
ピーナッツの匂いを嗅ぎ分けて、避難小屋の方角を見つけてちょうだい』
『分かった。だけどちょっと待ってくれ。急に鼻がむずむずしてきた。
変だなぁ。あれ?。ハッ・・・ハックション!』
突然たまが、くしゃみした。
次の瞬間。たまの鼻から鼻水が垂れてきた。
『やだ、この子。肝心な時に風邪をひいちゃったみたい!』
『えっ。猫も人間なみに風邪ひくの!。うそでしょ、聞いたことがないわ!』
うそではない。猫も人間と同じように風邪をひく。
季節の変わり目や、寒暖の差がはげしいとき、人は風邪をひきやすい。
猫もまた同じ理由で風邪をひく。
体調を崩して病気になることもあるし、腸内環境を悪くして便秘や
下痢にもなる。
作品名:赤襟の清ちゃんと、三毛猫のたま 66~70 作家名:落合順平